機械や設備のトラブルの予兆を事前に検知し効率的な保全業務が行える「予知保全」。
メリットの大きさは理解できても、実際に導入するイメージが湧かないという事業者もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、予知保全の導入事例を詳しく紹介します。
導入する際に気を付けるべきポイントも解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、予知保全については下記の記事で詳しく解説しています。
金沢機工の「機工報」を予知保全に活用した事例
ここでは、金沢機工株式会社の「機工報」を予知保全に活用した事例を紹介します。
金沢機工の「機工報」は、製造ラインで取得できる膨大なデータを解析し可視化することで、機械のエラーを予防診断することができる予知保全のソフトです。
金沢機工の「機工報」を自動車部品メーカーで活用した事例
金沢機工の「機工報」は、自動車部品メーカーの製造現場でも活用されています。
本事例における自動車部品メーカーで課題とされていたのが大量データの解析。シミュレーションの結果、ベルトコンベアの故障により発生した損失は、1,800万円にまで及ぶことがわかりました。
そこで、金沢機工の「機工報」を導入し、ベルトコンベアの電流値を計測。
外れ値が検出された際にメンテナンスを行う運用に切り替えた結果、適切なタイミングでの保全業務が可能となり、長期間生産が停止してしまう「ドカ停」の予防に寄与しました。
金沢機工の「機工報」を建機部品製造業で活用した事例
建機部品製造業においても、金沢機工の「機工報」が導入された事例が存在します。
本事例における建機部品製造業の現場では、横型マシニングセンタの予知保全に金沢機工の「機工報」が活用されました。
導入後は「機工報」の予知保全システムを利用し、電流値の変化を検出することで、適切な時期にメンテナンスが実施されています。
また、可視化されたデータを用いて手配に時間がかかる部品を事前に発注することも可能となり、「機工報」導入後は無駄なく効率のよい保全業務が実現されました。
金沢機工の「機工報」を建機メーカーで活用した事例
次に、金沢機工の「機工報」を建機メーカーで活用した事例を紹介します。
本事例の建機メーカーにおける課題は、工作機械の歩留まりを改善すること。
「機工報」を導入し、センサーを工作機械に付けて検証することで、「外れ値」を検出することができるようになりました。
導入後は、外れ値の検出が増えてきたタイミングで刃物台の締め付けトルクをメンテナンスすることで、歩留まりが改善され生産の安定につながっています。
金沢機工の「機工報」を部品加工メーカーで活用した事例
部品加工メーカーでは、工作機械やロボットの稼働率の監視に金沢機工の「機工報」が活用されています。
従来の信号灯を活用した方法では、工作機械やロボットの稼働率の監視は数十台程度が限界です。
そのため、効率面で大きな課題がありましたが、「機工報」導入後はワンクリックでシステム全体の稼働状況を俯瞰して分析することが可能となりました。
また、「機工報」の導入は、信号灯を増やすだけでは得られないさまざまな効果が期待できるため、DX関連事業の拡大などプラスアルファの成果をもたらしています。
金沢機工の「機工報」を切削加工製造業で活用した事例
金沢機工の「機工報」は、アナログデータの分析を得意としています。
通常、ノイズがひどいアナログデータを分析するには高度なフィルタリング技術が必要です。
そのため、搭載する際には高価となってしまう場合がほとんどであり、コストパフォーマンスの面で課題があるといえるでしょう。
そういった課題を解決するために、「機工報」では振動センサーと電流センサーをハイブリッドに活用したシステムの開発がしており、データ取得から必要な事業者をサポートすることが可能になります。
金沢機工以外の予知保全の事例3選
ここからは、金沢機工以外の予知保全システムを導入した事例を紹介します。
花王のオンライン異常予兆検知システム
生活用品や化粧品の製造・提供を行う花王株式会社では、製造現場においてオンラインを活用した異常予兆検知システムを導入しています。
花王が実際に活用したのが、アズビル株式会社のオンライン異常予兆検知システム「BiGEYES」です。
過去のデータを参考に正常時の機械の動きとの違いを検出するという手法が、従来の花王の異常検知方法とマッチし、スムーズな導入が実現されました。
また、「BiGEYES」の導入は保全担当者の心理的負担の軽減にも寄与しています。
従来の方法では、アラートが鳴ったときには既にトラブルや故障が発生してしまっているケースがほとんどだったため、対応に時間も手間もかかってしまっていました。
しかし、「BiGEYES」導入後は事前に異常を検知することで対応に時間的な余裕が生まれ、担当者の心身的な負担軽減につながっています。
これにより丁寧にプロセスを確認することができるようになり、ベテランから若手への技術の伝承を促す付加価値も生まれました。
トヨタ自動車が活用しているAIを活用した機械故障の予知保全システム
日本が世界に誇る自動車メーカー「トヨタ自動車株式会社」においても、予知保全システムが導入されています。
トヨタ自動車で実際に運用され効果を検証されているのが、産機製品の開発・販売を手がける「コマツ産機株式会社」の予知保全システムです。
AIのノウハウがない状態から開発された予知保全システムではありますが、その実績は高く評価されています。
製造現場では、導入後に実際にプレス機の異常の兆候を事前に検知し、最適なタイミングで保全業務を行うことができた事例も報告されました。
このように予知保全システムは部品の寿命を最適化するほか、労働力を最小化できるというメリットをもたらします。
RYOKI ENERGYの太陽光発電におけるパワーコンディショナーの故障予知システム
RYOKI ENERGY株式会社は、太陽光発電の電力変換装置であるパワーコンディショナーの故障を事前に検知できるシステムを開発しました。
パワーコンディショナーの故障により稼働が長期間止まってしまうと、その分の売電収入が減少してしまい生産効率に大きく支障が出ます。
それを事前に予防できる当システムは、収入を最大化させるほか、メンテナンスにかかる負担も減らすことが可能です。
日本では太陽光発電の導入が拡大しており、近年の電気代高騰の背景から今後もその傾向は続くことが予測されます。
そのため、メリットが大きい故障予知システムの需要もますます高まってくるといえるでしょう。
予知保全システム導入のポイント
ここからは、予知保全システムを導入する際に気を付けるべきポイントを解説します。
自社の業務に適用できるシステムなのかをよく検討する
予知保全システムを導入する際は、自社のシステムに導入できるかどうかを慎重に検討する必要があります。
予知保全システムはIoTを活用した新しい保全システムです。
活用することで多くのメリットを享受できますが、導入には決して安くないコストがかかります。
せっかく導入したのに、自社の業務に適用しなかった場合は大きな損失が出てしまうでしょう。
そうならないよう、導入前に自社で運用が可能なシステムなのかをしっかり検証することが重要となります。
費用対効果をよく検討する
予知保全システムを導入する際は、費用対効果を十分に検証しましょう。
自社の現状課題はどこにあるのかを明確にし、その課題を予知保全システムが改善してくれるかどうかを、導入前にしっかり検討するべきです。
予知保全システムの導入はコストが高く、十分な費用対効果が得られるかどうかが検討のポイントとなります。
また、AIを用いた予知保全は先進技術ですが、それを管理するのは人間です。
将来的に予知保全システムの導入は人的コストを削減する効果が期待できますが、体制が整っていない状態で導入し、逆に従業員の負担を増やす結果とならないよう注意しましょう。
自社に合ったシステムを提案してくれるサービスを探す
同業他社で使用されていたとしても、自社で同じように適用できる保証はありません。
そのため、丁寧に提案をしてくれたり、導入前にお試しで利用できる予知保全システムの製品を選ぶのがおすすめです。
金沢機工の「機工報」では、予知保全システムを導入したい現場に合わせたサービスの提案が可能です。興味がありましたら、ぜひ検討してみてください。
予知保全の理解を深めて導入を検討しよう
今回は、予知保全の導入事例の紹介や、導入する際に注意するべきポイントを解説しました。
AIがトラブルや故障の予兆を検知し事前に適切な保全業務を行える予知保全は、さまざまな現場で活躍しており、生産効率を高めるだけでなく、人件費の削減やSDGsの推進にも寄与しています。
本記事を参考に予知保全システムの理解が深まったら、ぜひ導入を検討してみてください。