現在、家電や自動車、製造分野など、幅広いシーンでIoTが活用されています。
故障の予兆を的確に察知しなくてはならないような予知保全の現場では、IoTは必須です。
同システムの導入によって、計画的にメンテナンスや部品の交換が実施できたり、大きなトラブルが発生する前に対策を立てることが可能になります。
この記事では、保全業務において解決すべき課題や予知保全にIoTを導入するメリット、実際に導入した企業の事例などを紹介しています。
突発的な設備・機器の故障を回避し、修理時間の短縮や保守コストの削減を目指している人は、ぜひ参考にしてください。
保全業務が抱える課題
保全業務は重要な仕事ですが、多くの課題を抱えています。
ここでは保全業務が抱える課題を3つ紹介するのでよく理解しておきましょう。
保全ノウハウが共有できていない
製造現場における設備類のノウハウは、一朝一夕で身につけられるものではありません。
長年の経験や熟練の技術が必要不可欠です。
そのため生産設備をメンテナンスする人員確保が困難になれば、ベテランのみが保全に関わる「属人化」を避けることができません。
属人化による影響は、業務の停滞や設備トラブルの発見の遅延など、現場にさまざまな弊害をもたらすものばかりなので注意が必要です。
保全コストがかかり過ぎている
設備の保全に関わるコストは年々増加し、費用がかさんでいきます。
その理由の一つが、設備の劣化です。
設備の使用年数が増えれば部品の摩耗や破損が進み、故障頻度も増え修理コストがかかるためです。
さらに、故障時には設備が停止するため、ダウンタイムが発生してしまい、修理コスト以外の損失が生じてしまいます。
設備の状態を把握し、安定した稼働を促すには定期的なメンテナンスが必要ですが、人的に保全業務をこなしている場合は当然そこに人件費もかかります。
効果的な保全業務ができていない
保全業務は、自動化が進まない限り、設備が故障してから対応するといった後追い業務になりかねません。
計画的な保全ができなければ、効率的かつ効果的な保全業務は不可能です。
そこで近年、各企業が早急に検討しているのが、IoT機器の導入です。
保全業務の自動化促進に役立ち、従来では気づきにくかった設備の異常も検知しやすくなり、保全業務の効率化を図れることから注目を集めています。。
予知保全にIoTを利用するメリット
予知保全にIotを利用することで保全業務の抱える問題を解消できます。
保全業務を行なっている企業の担当者の方は参考にしてみてください。
故障の予測と防止
設備にIoTセンサーを繋げば、リアルタイムで設備・機器のデータを収集できるようになります。
種類は、振動・温度・速度・距離などを測定するセンサーです。
保全業務の対象とする設備にセンサーを搭載し、集めたデータを分析すれば、その設備が正常な動作をしているかどうかの判断ができるようになります。
異常を検出した場合は、故障が発生する前に適切な保全措置を講じることが可能です。
事前にトラブルを回避できることから、修理コストの削減やダウンタイムの短縮に役立ちます。
結果的にリスクマネジメントにも繋がるため、安全な職場づくりにも適しています。
効率的な保全スケジュール
IoT導入の大きなメリットは、保全作業を最適化し、コストやリソースの無駄を削減できることです。
IoTを導入していない場合、突発的なトラブルに見舞われることが多く、生産・製造などのスケジュールを調整しにくいのが現状です。
しかし、IoT化ができれば、設備のコンディションから「壊れそう」という故障のタイミングがわかるようになり、スケジューリングの精度が格段に向上。
設備のリアルタイムの状態も的確に把握できます。
設備のリスク原因を事前に取り除けるため、大きなトラブルへと発展しにくくなるのがポイントです。
設備の長寿命化
予知保全によって機器の状態を適切に管理できれば、結果として機器の寿命を延ばすことにつながります。
しかし、設備の老朽化や故障のタイミングを人の目で見抜くのは非常に困難です。
気がつくのは、症状がある程度悪化してからになることが多いでしょう。
ところがIoTでは、人では感じ取れないわずかな振動のズレや温度の変化などを適切に検出。
生産が停まるような故障が起きる前にメンテナンスを実施し、設備や機器への負担を軽減します。
また設備は長期間の稼働によって部品などが摩耗や劣化、変形し、交換が必要になります。
IoTを活用すれば、これまで定期メンテナンスや故障後に行っていた部品交換を、適切なタイミングで行うことができ、設備ごとに定められた耐用年数に至るまで使用できる可能性があります。
リモート監視
リモート監視は、IoT技術を用いて遠隔で機器の状態を監視するシステムです。
このシステムにより、監視場所と設備場所が離れていたり、複数の場所で稼働している設備でも一元管理することができます。
センサーにより、データが24時間一か所に集まるため、最少人数で管理することが可能です。
離れた場所あるいは大規模な工場、複数の設備を持つなど場合でも、それぞれに保全担当者を配置する必要がなく省人化を図れ、コスト削減にも繋がります。
また、異常が発生した際にはアラームで通知されるため、的確に迅速な対応ができるのも大きなメリットです。
同システムでは、多くの稼働記録が一か所に集積するため、より精度の高い異常データ抽出よるリスク回避に役立ちます。
データ分析と最適化
IoTデバイスは生産工程の可視化に役立ち、生産ラインへの投入から加工、出荷に至る工程をデータ化することが可能です。
IoTの活用で得た膨大なデータを一元管理し、収集したデータは可視化に用います。
IoTを活用した生産工程の可視化とデータ分析は、不良品や破損のスピーディな発見に貢献し、品質管理の効率化を図れます。
また、生産品に不備が生じた場合には、履歴データから原因究明ができるのもメリットです。
設備停止という万が一の事態を避けながら、機器のパフォーマンスや効率を向上させるための最適化策を見つけ出せます。
IoTを活用した予知保全の導入事例
Iotを活用した予知保全の事例を3つ紹介します。
導入を検討している方は参考にしてみてください。
メルコ・ディスプレイ・テクノロジー株式会社の事例
ドライポンプのモータ故障を予知保全するため、三菱電機株式会社が提供する汎用シーケンサ「MELSEC-Qシリーズ」用電力計測ユニットを導入。
結果、消費電流値の変化を予知できるようになり、比較的軽度の故障で対応できるようになりました。
重大な故障に発展してからでは膨大なコストが必要になりますが、予知保全機器の導入によりメンテナンス費用の40%削減を達成しています。
保全スケジュールを最適化できたことに加え、効率的な生産管理や予算管理による安定した生産ラインを実現できました。
参照:三菱電機
株式会社前川製作所の事例
産業用冷凍機の製造・販売や、冷凍・冷蔵倉庫冷却設備の設計・施工を行っている株式会社前川製作所は、産業用冷凍機に予知保全システムを導入。
株式会社YE DIGITALが提供する機械学習を採用しました。
使用環境に応じた正常稼働状態をモデル化できる機械学習を実行して、高精度かつ簡単に利用できることが導入の決め手となりました。
パーツ交換の無駄を軽減できたことによる保守コスト削減や、故障予兆の迅速な発見によるダウンタイム発生の抑制、異常の原因究明の迅速化および効果的な対策の実施などが、導入のメリットとして挙げられます。
金沢機工の機工報の事例
機工報は、生産ラインのデータの分析と可視化を効果的に行えるIoTデバイスです。
膨大な量のデータを分析でき、故障の予兆にいち早く気づきます。大規模な障害が生じる前に対策を講じられるため、製造現場の予知保全システムとして重宝する技術です。
自動車部品の製造・販売メーカーA社では、以前、焼き入れコンベアのチェーンが破断してしまい、1,800万円ほどの損害が生じました。
このことをきっかけに、機工報の導入を決断。同システムにより、モーターの電流値の異常を敏感に察知できる体制を整えています。
操作感の良さや電流値の変化のわかりやすさが好評です。品質管理にも活用しています。
同システム導入後のA社では、「機工報をもっと以前から導入していれば、膨大な損失金が発生していなかっただろう」と話しています。
機工報に興味がある方は下記のサイトからお問い合わせください。
参照:金沢機工株式会社
IoTを導入した予知保全の利用を検討しよう
予知保全へのIoT導入は、生産設備の常時監視・把握を可能にします。
IoTデバイスによって、データの収集と可視化ができるようになれば、人間の判断だけでは難しい故障などの予兆を検知するのに有効です。
異常が発生した際の迅速な対応をはじめ、設備の故障を事前に予知し対応できるようになれば、保守コストの削減にも繋がります。
さらに属人的に陥りやすい工程もマニュアル化しやすくなるため、業務を分散できるようになることもIoT導入のメリットです。
保守担当者の負担が軽減され、業務の停滞が解消できれば、生産性効率も上がります。予知保全の導入の際は、IoTによる効果的な保全業務を目指してみてはいかがでしょうか。