日本人の食卓に欠かせない日本の代表的な料理の一つがそばです。
大晦日に食べる「年越しそば」や、引越しをした際に近隣住民に挨拶をしながら配る「引越しそば」などの風習にもあるように、そばは日本人と切っても切り離せません。
実際、そばは日本で多く生産されていますが、そばの実を収穫した後の製粉する際に、必ず発生する「そば殻」の廃棄処分が問題になっています。
そば殻の多くが再利用されずに廃棄処分されており、廃棄処分にも費用がかかることから、処理方法で悩んでいる製粉会社は非常に多いです。
そのため、この記事ではそば殻の使い道や企業の取組事例について紹介していきます。
この記事で解説するポイントは以下です。
この記事のまとめ
・そば殻の多くが廃棄処分されている
・そば殻の処理方法を紹介
・そば殻を使った取組み事例を紹介
そば殻の処理に困っている方は、この記事を参考にしてください。
そば殻の現状
国内で排出されるそば殻は、輸入そばを含めると約2〜3万トンです。
この内の一部はそば枕の充填物として再利用されていますが、多くは廃棄処分されてしまっています。
しかも、近年の廃棄物処理規制により、廃棄処分もままならない状態です。
このため、そば殻の再利用方法に悩んでいる製粉会社は少なくありません。
そば殻のおすすめの使い道5選
そば殻はそば枕の充填剤として活用されることが多いですが、その他にも、そば殻を土壌改良剤や緩衝材として活用するなど、再利用されるケースが増えてきています。
しかし、まだまだ再利用できずに困っている方は多いです。
そのため、ここでは、実際に再利用に使われている、そば殻のおすすめの使い道を5つ紹介していきます。
解説するポイントをよく理解したうえで、そば殻の再利用方法を検討してみてしてください。
枕として活用する
そば殻の使い道として一番多いのが、そば枕としての活用になります。
枕の充填物として一般的なポリエチレンパイプやポリエステル綿やクッション材ではなく、そば殻を活用することで、多くのメリットがあるためです。
最も大きなメリットは、通気性が良く熱がこもりにくいという点です。
適度な吸湿性を持ち合わせているため、寝ているときに出る汗をスムーズに放出してくれます。
このため、夏の気温が高い時期でも、涼しくて快適な睡眠をとることが可能です。
また、定期的に中身のそば殻を入れ替えることで長期利用ができるうえ、天然素材のため、他の枕と比較すると安価に手に入れることが可能な点も大きなメリットと言えます。
実際、そば殻の枕は古くから利用されており、一定の需要がある商品です。
土壌改良剤として活用する
そば殻を炭化して、そば殻くん炭にすることにより、土壌改良剤として活用できます。
もみ殻くん炭よりも大粒で非常に細かい隙間をもち、微生物や空気、水分のもちを良くしながら、水はけも良くしてくれるのが特徴です。
さらに、そば殻くん炭は土壌中のPH調整にも役立つうえに、土壌に混ぜることで土を軽くする効果もあるので、土壌改良剤としては最適と言えます。
そばを育てている農家でも、利用できるため、注目を集めている使い道です。
消臭剤として活用する
そば殻を炭化することで、消臭剤としても活用することができます。
くん炭にすることで、無数の孔ができ、悪臭成分を吸収することができるためです。
木材を炭化したものと比べると、そば殻くん炭は表面積が小さく、小さな容器に詰めることも可能なため、置き場所に困らないという特徴もあります。
狭い場所においても邪魔にならないため、商品化して売り出そうとする動きも珍しくありません。
緩衝材として活用する
そば殻は、緩衝材としても活用されています。
殻が硬くてつぶれにくいそば殻同士が重なり合うことで、隙間が生まれることから、通気性が非常に高く熱がこもりにくいためです。
特に卵の配送には適しているといわれており、そば殻を緩衝材に利用している養鶏場も少なくありません。
なお、緩衝材として商品と一緒に配送した後は、回収したそば殻を土壌改良剤として活用したり、そば枕の中身として活用しているところもあります。
バイオコークスとして活用する
バイオコークスとは、雑草、茶葉、野菜くずなどの光合成する植物を使って作られる再生可能な固形燃料のことです。
そば殻も、このバイオコークスとして活用されています。
バイオコークスは、他のバイオマス燃料と比較すると極めて高いポテンシャルを持っているのが特徴で、従来のバイオマス燃料では不可能とされてきた「高い圧縮強度」と「高温環境下での長時間燃焼」を実現しているのが特筆すべき点です。
また、植物を原料としているため、製造時に廃棄物が出ない「ゼロエミッション燃料」としても注目を集めています。
そば殻を使った企業の取組事例3選
そば殻の使い道は多数ありますが、実際に再利用している企業の事例を確認しておくことで、そば殻の再利用に取り組みやすくなります。
紹介する企業は以下です。
・そば殻を活用したバイオマス固形燃料の開発の取組
・そば殻を漉き込んだ「有馬紙」の開発
・炭化装置を使ってそば殻を炭化して土壌改良剤として活用する取組
各社の取組事例を参考にしながら、そば殻の活用方法を検討してください。
そば殻を活用したバイオマス固形燃料の開発の取組
新潟県十日町市内企業は、そば殻を活用したバイオマス固形燃料の開発・販売を行っています。
この取り組みは、新潟県十日町市にあるそばの老舗、株式会社小嶋屋総本店と障害福祉サービス事業の社会福祉法人十日町福祉会、近畿大学が共同で行っている取り組みです。
株式会社小嶋屋総本店から発生する年間約40トンのそば殻を使用し、近畿大学の開発協力や技術支援のもと、固形燃料「バイオコークス」を生産。
生産されたバイオコークスは、石炭コークスや薪に変わる固形燃料として販売され、養殖ふぐ事業の温水用ボイラーの燃料としても使用されています。
なお、バイオコークス製造工程において、社会福祉法人十日町福祉会が運営する障がい者就労支援施設「なごみの家」に所属する障がい者が作業を行っているので、地元の障がい者に施設外就労の機会を提供しており、社会貢献度も高い取り組みです。
そば殻を漉き込んだ「有馬紙」の開発
この事例は、そば殻を漉き込んだ「有馬紙」を開発し、再利用している事例になります。
和紙の総合商社である株式会社西野商会が身近な素材を使って新時代にふさわしい紙が開発できないかと考えて、そば殻から紙を作ることにチャレンジしました。
収集したそば殻を鉄鍋でよく煎って、粗挽きした物を紙の中に漉き込んでいるため、そば殻を混ぜ込んだ有馬紙から、ほんのり香ばしい香りがでるのが特徴です。
そば殻の香りが落ち着いた気分にさせてくれると、非常に人気のある紙になります。
なお、そば殻を煎る工程で発生するそば殻炭は、遠赤外線効果が非常に高い炭とされており、消臭効果などもあり、活用用途の幅が広がることが期待されている状況です。
炭化装置を使ってそば殻を炭化して土壌改良剤として活用する取組
炭化装置を使ってそば殻を炭化することにより、土壌改良剤として活用している関東地方で農業用資材を扱うA社の事例になります。
A社と取引のある製粉工場から、そば粉を生成する際に発生するそば殻の利用方法が見つからず、廃棄処分するのにも費用がかかるため、活用方法に悩んでいると弊社に相談がありました。
そこで、素材を生かしながら再利用する方法として提案したのが、炭化装置を活用して、もみ殻をくん炭に変換して再利用する取組みです。
通気性などの効果を発揮するため、優良な土壌改良剤になっているうえに、そば畑に還元することで、循環型の仕組みが出来上がっています。
また、J-クレジット制度にも認定され、収益化を助けてくれていると、お客様からも喜びの声を頂きました。
今流行りのSDGsに則った処理にもなるため、ぜひ検討してみてください。
なお、J-クレジット制度については、以下の記事で詳細に解説しています。
そば殻の使い道は炭化がおすすめ!
国内で排出されるそば殻は、輸入そばを含めると2〜3万トンありますが、再利用されないまま、廃棄処分されるケースが多いのが現状です。
しかし、そば殻の再利用方法は徐々に広がっており、さまざまな研究もされています。
その再利用方法の中でも、おすすめなのが炭化装置などを活用して、そば殻を炭化することです。
炭化することにより、土壌改良剤や消臭剤、紙に漉き込むなど、活用の幅も広く、環境にも貢献できます。
そば殻の処分方法で悩んでいる方は、そば殻を炭化して再利用する方法を検討してみてください。
この記事で解説したポイントは以下です。
・そば殻の多くが廃棄処分されている
・そば殻の処理方法を紹介
・そば殻を使った取組み事例を紹介
それぞれのポイントを理解して、参考にしながら、そば殻の有効活用を図ってください。