近年、ニュースや新聞などでSDGsに取り組む企業や、取組事例の紹介をしているのを目にすることが増えています。
そのため、SDGsの取り組みを行っている企業や、検討している企業も年々増加の一方です。
しかし、企業にとってSDGsに取り組むことにどのようなメリットがあるのかを、正しく理解していない企業も少なくありません。
実際に、SDGsは取り組むことで費用や手間などのコストがかかるデメリットがあるため、積極的に取り組めない企業も多いです。
そのため、今回の記事では企業がSDGsを取り組むメリットとデメリットを解説していきます。
企業の実際の取り組みについても紹介しているので、是非参考にしてみてください。
この記事のまとめ
・SDGsの意味は、「持続的な開発」を行って目標を達成すること
・SDGsの取り組みが始まったきっかけは差別や貧困、環境問題などの社会問題を解決すること
・SDGsに企業が取り組むメリットは4つある
・企業がSDGsに取り組むデメリットと注意点をよく理解しておかなければならない
・企業がSDGsに取り組むメリットを理解して取り組んでいる企業は少ない
SDGsとは?
企業としてSDGsに取り組みメリットを生むためには、SDGsの意味や取組内容について理解する事が非常に重要です。
そこで、ここではSDGsについて、以下の3つのポイントに分けて解説します。
・SDGsの意味
・SDGsに取り組む目的
・SDGsの取り組みが始まったきっかけ
最後まで読んで、SDGsに取り組む際の参考にしてください。
SDGsの意味
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語訳は持続可能な開発目標となり、読み方は「エス・ディー・ジーズ」です。
2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2030年までに達成するために掲げた目標になります。
SDGsに取り組む目的
SDGsに取り組む目的は誰一人として取り残さずに、持続可能な開発を行って目標を達成する事です。
持続可能な開発目標とあるように、「持続可能性」が重要なテーマとなっています。
では、持続可能性とはどういったものなのでしょうか?
それは将来の世代が満足して暮らせる欲求を満たしながら、現在の世代のニーズを満たすという考え方です。
これまで、世界では経済成長に重きが置かれており、その成果もあって20世紀には各国が大幅な経済発展を遂げることに成功しました。
一方で、その裏では自然環境の破壊や格差の拡大や、地球温暖化による気候変動、人権や貧富の差による差別など多くの社会問題が発生したのです。
そうした世の中の負の状況を正すため、「持続可能な開発」という考え方をもとに、世界各国が一丸となった取り組みが行われています。
SDGsの取り組みが始まったきっかけ
SDGsが策定される前に、世界で取組が進められていたのは「MDGs」になります。
MDGsとは2000年9月に採択されたミレニアム開発目標のことで、8の目標、21のターゲットからなる、いわばSDGsの前身のことです。
この「MDGs」の取り組みが行われている中で、2015年9月に国連で開催された持続可能な開発サミットにおいて、全ての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げらた誰ひとり取り残さない(No one will be left behind)を理念とする「SDGs」が採択されたことによって「SDGs」と取り組みが始まりました。
なお、SDGsは2030年を達成目標とし、17の目標と169のターゲットから構成された取組みが進められています。
企業がSDGsに取組むメリット
企業の中にはSDGsに取り組むことにより、コストや時間がかかってデメリットの方が多くなるのではないかと考え、SDGsの取り組みを実施していない企業も存在します。
しかし、企業としてSDGsに取り組むことで得られるメリットは少なくありません。
そこで、ここでは以下の4つのメリットを紹介します。
・ビジネスチャンスが広がる
・ステークホルダーとの関係性が向上する
・世間からの関心が高く、企業のブランド価値向上に繋がる
・優秀な人材の採用が可能になる
それぞれについて解説していきますので、取り組む際の参考にしてください。
ビジネスチャンスが広がる
SDGsに取り組むことにより、「新規事業やサービス、商品を生み出すキッカケ」や、「それぞれ異なる強みを持った企業間でのタッグを組む機会」など、ビジネスチャンスが広がります。
共通の目的「SDGs」を企業間で持つことが出来るうえに、貧困や飢餓、環境問題など、今まで企業が取り組んで来なかった分野の取り組みを企業が行うためです。
実際、「SDGs」は世界共通の目標であるため、国内に留まらず世界の企業とタッグを組んだ事例もあります。
このように、「SDGs」に取り組みことでビジネスチャンスが広がり、企業の業績がよくなる可能性があるので、「SDGs」の取り組みに興味を持っているなら、検討することがおすすめです。
ステークホルダーとの関係性向上
企業がSDGsの取り組みを行って、CSR活動(企業の社会的責任)を果たすことで、ステークホルダー(利害関係者)との関係性が向上します。
ステークホルダーから見ると、SDGsに取り組んでいる企業は、「この企業は世界が抱えている課題にも取り組んでいる」、「この会社は信用できる」といったように、良い印象を与えることが出来るためです。
一方で、SDGsに取り組んでいない企業は、世界中が一丸となって取り組む課題に無関心であるという印象をステークホルダーに与えるため、ステークホルダーからの信頼を得ることが出来なくなる可能性があります。
企業のブランド価値向上に繋がる
SDGsに企業が取り組むことで、企業のブランド価値を向上することが出来ます。
貧困や飢餓をなくすこと、質の高い教育を提供する、ジェンダー平等や持続可能なエネルギーの確保などの様々な目標をSDGsは掲げており、世界的にも大きな社会問題に対して、責任を果たす企業として認識されるためです。
また、世界から注目を集めているSDGsは、政府機関や自治体だけでなく、企業の取組にも大きな役割が期待されているため、社会の関心が高いことも企業価値やイメージの向上、ブランディングなどに影響を与える原因になります。
一方で、SDGsに取り組んでいない企業は、社会課題対して「無関心である」という印象を与える可能性があるため、そういった悪い印象を世間に与えてしまうと企業価値やブランド力を下げることになります。
優秀な人材の採用が可能になる
企業がSDGsに取り組むことで、優秀な人材の採用が出来る可能性があります。
SDGsの取り組みをすることは世界が抱えている課題の解決という、社会的に見ても先進的な取り組みであるため、こういった先進的な取り組みを行う高い企業価値をもつ企業には、先進的な思考をもった優秀な人材が集まりやすくなるためです。
さらに、2017年のダボス会議で、SDGsが創出する市場機会価値は年間12兆ドル、日本円でおよそ1200兆円の経済効果と、2030年までに世界で約3億8000万⼈の雇用が創出されるという発表があったことも関係しています。
それほど経済効果もあり雇用を創出出来るものでもあるSDGsに取り組むことで、社会情勢員聡い優秀な人材が集まりやすくなるからです。
このように、SDGsに積極的に取り組む企業は、企業価値も高まることで人材の採用にも有利になるケースが多いです。
企業がSDGsに取り組むデメリットと注意点
先述したように、企業がSDGsに取り組むデメリットもあります。
例えば、環境分野の取組みであれば、新たな製品やサービスの開発、研究費などのコストが必要なうえに、企業で働く従業員も新たな仕事やサービスの概要を覚えるなどの負担が掛かります。
さらに、SDGsの取組を始めたものの、社会貢献への意識が強くなりすぎて本業とかけ離れてしまい、売上・利益に結びつかずSDGsの取り組みを挫折してしまうケースも少なくありません。
そうならない為にも、SDGsに取り組むデメリットと注意点を事前に理解しておくことが重要です。
企業がSDGsに取り組むデメリット
企業がSDGsに取り組むデメリットは以下の2つです。
・高いコストがかかる
・取組途中で挫折してしまうと費用と時間が無駄になってしまう
上記のデメリットについて、具体的な事例を2つ紹介します。
高いコストがかかる
SDGsの取り組み内容次第ですが、場合によっては、高いコストが発生することがあります。
例えば、以下の4つです。
・SDGsの取組を理解するには欠かせない社員向けの教育研修費
・新規事業への取り組みにかかる設備導入や開発費用
・環境に配慮した商品を作る場合は製品購入によるコストアップ
・社員向けの待遇改善費用
大きく社会や環境に貢献する取組にするためには、上記のように、ある程度の費用負担を考慮に入れる必要があります。
ただし、SDGsの取り組みには、まったくコストがかからない取り組みもあるため、コストが気になる企業はすぐに出来るSDGsの取り組みを行うようにしてください。
取組途中で挫折してしまうと費用と時間が無駄になってしまう
SDGsの取り組みを途中で挫折してしまうと、取り組みにかけた費用と時間が無駄になってしまう可能性があります。
例えば、本業とSDGsの取り組み内容がかけ離れているために、膨大な手間やコストがかかるケースです。
そういった場合には、新たな設備や商品開発、社員向け研修などに費用や時間を費やしたにも関わらず、「面倒」「手間」「形だけで意味がない」など様々な理由をつけて途中でSDGsの取り組みをやめてしまいます。
そのため、途中で取り組みをやめないようにするためにも、「本業と関係のある取り組みを行う」ことや、「事前に取組目標の期限やゴール、費用、時間など綿密に計算して計画を立てる」ことが重要です。
企業がSDGsに取り組む際の注意点
企業がSDGsに取り組む際は、注意しなくてはならないポイントがあります。
注意点をよく理解して取組を行うことで、SDGsの取組を成功させることが出来る可能性が上がるため、しっかりと確認するようにしてください。
ここでは最も注意すべき「SDGsウォッシュ」について解説していきます。
SDGsウォッシュにならないように注意する
企業がSDGsの取り組みを行う際に、最も注意するべきポイントは「SDGsウォッシュ」にならないことです。
SDGsウォッシュとは、実態が伴わないのにSDGsに取り組んでいるふりをする、見せかけのSDGsの取組を指します。
例えば、自社のHPなどにSDGsと事業を結び付けた取り組みを進めていると掲載しているが、実際には行動を起こしていないケースです。
また、公表しているSDGsの取組と実際に行っている事業内容が矛盾しているケースも挙げられます。
具体的な事例を挙げると、企業がSDGs目標13の「気候変動に具体的な対策を」の解決に向けた取り組みの一環で、社用車用に電気自動車を購入し二酸化炭素排出削減に取り組んでいるが、実際は社員のガソリン車利用率は変わっていないケースです。
このように、SDGsに取り組んでいるように見せかけ、うわべだけの取組になってしまうと社会からの信用を落とすことになりかねないので、注意する必要があります。
企業のSDGs取組事例をご紹介
ここまで、企業にとってSDGsの取組を進めることはデメリットも生じる一方で、世界が抱える課題に取り組むことで得られるメリットは非常に多いことを解説してきました。
では実際に、既にSDGsの取組を行っている企業ではどのような取組を進めているのでしょうか?
以下の4社の取組事例を紹介していきます。
・三菱商事㈱の取組事例(本店オフィスビルにおける CO2 フリー電力調達)
・ダイキン工業㈱の取組事例(環境負荷を低減する製品・サービスの開発と普及促進)
・イオンモールの取組事例(全92モールで太陽光発電システムを採用)
・金沢機工(株)の取組事例(炭化装置を使用した廃棄物の資源化)
取組事例を参考にしてみてください。
三菱商事㈱の取組事例
三菱商事㈱の取組事例は本店オフィスビルにおけるCO2フリー電力調達の取組みです。
この取り組みは三菱商事㈱が掲げる、サステナビリティ重要課題の一つである「低炭素化社会への移行」に関する取り組みとして、本店ビル(三菱商事ビル)調達電力のグリーン電力化を行いました。
発電事業を行っている、三菱商事エナジーソリューションズ㈱が出資・運営する太陽光発電所にて発電された環境価値(トラッキング付非化石証書)付きのCO2フリー電力を、電力小売事業を行っているMCリテールエナジー株式会社を通じて調達することで、「RE100」にも適用可能な再生可能エネルギーで三菱商事ビル内の電力需要をまかなっています。
このように、三菱商事㈱の取組みは発電から小売までグループ企業が一体となって再生可能エネルギーを供給・調達・利用することで、温暖化の問題に対して貢献出来る取り組みです。
※出典:三菱商事㈱
ダイキン工業㈱の取組事例
ダイキン工業㈱の取組事例は環境負荷を低減する製品・サービスの開発と普及促進です。
ダイキン工業㈱の主力商品であるエアコンは、使用時のCO2排出量が特に大きいので、インバータをはじめとした省エネエアコンや低温暖化冷媒を用いたエアコンを世界中で普及させることに注力しています。
2020年度に温室効果ガス排出量を6,000万t-CO2抑制という目標に対し、2018年度に6,700万t-CO2抑制と目標を上回り、2020年度は7,000万t-CO2抑制を達成しました。
このように本業と密接に関係したSDGsの取り組みをダイキン工業は行っています。
※出典:ダイキン工業㈱
イオンモールの取組事例
イオンモールの取組事例は全92モールで太陽光発電システムを採用した事例です。
他の商業施設に先駆けて太陽光発電設備を国内73モール、海外19モールに導入し、一部のモールでは停電時にも電力を活用できるシステムを採用しています。
また。イオンモール セン ソック シティ(カンボジア)では、1MW級の太陽光発電設備と高効率チラーを屋上に設置し、年間約1,564トンの大幅なCO2削減を目指している環境に配慮した取組も行っており、イオンもSDGsの取り組みを積極的に行っている企業です。
※出典:イオン
金沢機工㈱の取組事例
弊社では炭化装置を広め、捨てるはずの産業廃棄物を資源化するSDGsの取り組みを行っています。
炭化装置は有機物を熱分解して炭にすることできるため、燃焼処理と異なり二酸化炭素の排出を抑えることが可能な装置です。
また、炭化により発生した炭は、燃料や自然堆肥などの有機性の資源として利用可能です。
このように、捨てるはずの産業廃棄物などを資源化する事で環境に配慮した取組を行っています。
仮にあなたの会社で産業廃棄物を焼却処理しているのであれば、炭化装置を導入することも手軽にSDGsに参加する一つの手段です。
※出典:金沢機工㈱
まとめ
この記事では企業がSDGsに取組むメリットはあるのか具体例を用いて解説してきました。
SDGsに取り組む意味・取組む背景を正しく理解した上で、企業がSDGsに取組んだ場合、ビジネスチャンスが広がることや、企業イメージの向上に繋がるなどの多くのメリットがあります。
ただし、高いコストがかかってしまう、途中で中断してしまうと費用・時間が無駄になるなどのデメリットもあるため注意が必要です。
そのため、企業はポイントを整理して、SDGsに取組むメリットや注意点を正しく理解する必要があります。
SDGsについてこの記事で解説したポイントは以下です。
この記事で解説したポイント
・企業がSDGsに取り組むメリットは4つ
・企業がSDGsに取り組むデメリットは2つ
・実態が伴わないのにSDGsに取り組んでいるふりをするSDGsウォッシュに注意する
・企業の取組事例を4社紹介
この記事を企業がSDGsに取組む際の参考にしてみてください。