予知保全の導入を考えているが、自社製造ラインに合ったシステムや導入手法がわからないという人もいるのではないでしょうか。
予知保全システムを効果的に導入すれば、設備メンテナンスのコスト削減はもちろん、ダウンタイム解消による生産性の向上が期待できます。
この記事では、予知保全で使われる手法(技術)と導入の流れを詳しく紹介しています。
生産がストップしてしまうような故障を予兆し、効率的に設備を稼働させたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
予知保全の手法
予知保全の手法にはいくつかの種類があります。
ここでは、4つの手法をご紹介するので確認してください。
なお、予知保全については下記の記事で詳しく解説しています。
センサー技術によるデータ収集
予知保全では、設備の状態を常に計測するためのセンサーが必要不可欠です。
各種センサーを設置することで、設備をリアルタイムに常時監視することが可能になります。
例えば電流に関するセンサーは、電流を用いて動作する生産設備に効果的です。
電流値を測定し、通常とは異なる値を検知した際に故障の予兆を知らせてくれます。
モーター設備の予知保全に使用されることが多いものの一つが振動センサーです。
振動を計測し、その数値異常でベアリングのトラブルや回転軸のズレなどを早期発見することができます。
この他にも、リーク電流による設備火災や感電事故を予防する絶縁抵抗センサーや、設備の熱が不自然に上昇して生産停止になるのを予防する温度センサー、電線の劣化にいち早く気づいて生産の突発停止を予防する抵抗値センサーなど、数多くの種類があります。
しかし、予知保全に関するセンサーを製造現場すべての設備に取り付けるには、膨大なコストが必要になります。
そのため、設備の重要度に合わせて優先順位を検討し、導入することをおすすめします。
データ分析・故障予測
予知保全では、センサーをつけるだけでは不十分です。
センサーによって収集したデータを正しく分析する必要があります。
例えば、Excelのグラフ機能などを使用してデータを可視化し、一目でわかるようにすることが重要です。
ただ単にデータ化した数値の並びを見るだけでは異常値や欠損状況を正しく把握することはできません。
ファイル形式や入力フォーマット、数値の書式を統一し、可視化できることが大切になってきます。
その際、収集したデータから不要な部分を取り除く除去作業や、データ分析に必要な箇所だけを取り出す分割作業をすることで、正確性や効率化が図れます。
分析対象のデータが多い場合は、スケール変換と呼ばれるデータの計測範囲を揃える処理の実施も検討しましょう。
収集したデータに「正常」「異常」のラベルを付与することで、設備やセンサーの状態が把握しやすくなります。
また、分析結果を確認して故障の原因になりやすい箇所を把握することで、故障の兆候を迅速に見つけ出せます。
このように、予知保全では収集したデータをいかに扱うかで、保全の質に大きく影響を与えるのです。
AI・機械学習の活用
AIを活用すれば、従来人が行っていた予知保全業務を自動化することもできます。
予知保全をより高精度で実行でき、生産性向上やダウンタイムの短縮を狙えるのが大きなメリットです。
具体例としては、納期の遅延リスクの低減や、保全業務における人的ミスの軽減、修理コストの削減などがあり、保全システムにAIを活用することで多くのリスクを回避することが可能になります。
では、AIを導入するとなぜ高精度な予知保全が可能なのかをみていきましょう。
人が行う予知保全には、専門的なノウハウと豊富な経験が必要です。そのため、新たな予知保全担当者の育成には、膨大な時間とコストがかかってしまいます
。しかしAIを導入し、予知保全の自動化を促進すれば、高度で迅速なデータ処理能力などにより人的要因によるミスを軽減できるのはもちろん、技術が未熟な担当者でも熟練者と変わりない予知保全を行えます。
リアルタイム監視システム
設備の稼働ストップは、利益の損失に直結します。
突発的な設備トラブルを予知して事前に対処するためにも、リアルタイムで設備の状態を監視し、異常を検知できる体制をとっておくことが重要です。
具体的には、設備にセンサーを取り付け、状態異常を常時アラームで知らせる体制を整備します。
そうすることで、通常とは異なる動きや温度などを察知できるようになり、ダウンタイムの短縮を目指せます。
加えて、設備のモニタリングに必要な人員も削減できるため、保全担当者の負担を軽減できます。
また、同システムが得たデータは、設備が故障する可能性の判断にも役立ちます。
統計・機械学習・モデリングなどと組み合わせて活用し、メンテナンス実施のタイミングも予測可能になります。
予知保全導入のステップ
予知保全導入の手順をご紹介します。
導入を検討している方は参考にしてみてください。
現状分析と目標設定
システム導入の第一ステップとして、設備の現状を分析、把握します。
この分析内容をもとに課題を抽出し、予知保全の目的や目標を明確にしなければなりません。
このときに抽出した課題は、予知保全メーカーと共有することも重要です。
社内検討だけでは予知保全の具体的な必要性までを認知できず、効果の見えないところにコストはかけられないという理由で導入を見送ってしまうケースもあるからです。
大切なのは、課題をもとに予知保全の必要性や導入による効果を社内全体で理解することです。
実際に導入した際に有効活用できるかを具体的にイメージしましょう。
目標にあった技術の選定
どのような予知保全システムを導入するか考える際、導入後の運用イメージをすることが大切です。
目的達成にどう役立つのかをしっかりと吟味し、導入技術を選定しましょう。
設定した目標よりも過剰な技術を導入してしまうと、余計なコストがかかってしまい本末転倒な結果になってしまいます。
逆に、無駄を出さないようにと最小限の技術を選んでしまうと、トラブルによっては導入したシステムでは対応できない可能性も出てきます
設備に対して過剰な、あるは過小な予知保全システムを導入し、のちに不具合を発見する事態を避けるためにも、最初に目標に合った技術やリソースを選定することが重要なポイントです。
予知保全システムの構築・運用
ここからは、いよいよ運用を開始するステップを紹介します。
選定した技術やリソースをもとに予知保全システムを構築します。
すでにセンサーが取り付けられている場合は、蓄積したデータを用いて準備します。
これからセンサーを取り付ける場合は、判断材料となるデータが揃っている予知保全メーカーに相談してみるのもよいでしょう。
必要なデータを準備したら、同システムのテスト環境をつくります。実際に目標を達成できるかどうかの検証と分析を実施し、問題がなければ構築は完了です。
パフォーマンス評価と改善
予知保全システムは、導入して終わりではありません。
快適に運用するためには、継続的にシステムの改善をしていくことが重要です。
改善点の発見は、不足している機能や精度を割り出し、定期的なパフォーマンス評価を行うことから始めます。
見つけ出した改善点にはどのような問題・課題が内在しているのかを徹底的に洗い出し、適切な改善策を実行しましょう。
予知保全を効果的に運用するためのポイント
予知保全を導入しただけでは効果的に運用できるわけではないため、効果的に運用するためのポイント理解しておきましょう。
社内の連携・協力体制の構築する
同システムを効果的に運用する場合、できるだけ課題を明確にする必要があります。
まずは社内の意見をヒアリングし、課題を解決できる予知保全システムが構築可能かどうかを確認します。
例えば、課題に対して、異常検知システムのみを導入するのか、それとも原因推定まで行えるシステム導入をするのかなど、解決したい課題のレベルについて話し合い、運用イメージをつくるのがおすすめです。
予知保全の導入目的の一つは、設備の故障や不具合を予知して、設備トラブルによるダウンタイムの回避することです。
「壊れそう」というタイミングで的確に修理しなければなりません。
従来の管理方法では、予知保全担当者が現場にいなければなりませんでした。
専門的な知識や技術を持った人員には限りがあります。
直接現場に行けずに適切な判断ができないこともあるでしょう。
しかし同システムを活用すれば、社内での連携・協力体制が充実し、故障するであろうタイミングで最適化された人員を配置でき、部品交換などの修繕作業が可能になります。
継続的な技術・知識をアップデートする
予知保全は、技術の進歩や新しいノウハウが常に発生している分野です。
とくにAI技術の進歩はめまぐるしく、予知保全の自動化においても大きな役割をはたしています。
例えば、設備などの「正常」「劣化」の判別を人が行うには、熟練の経験が必要です。
しかし、高精度を誇るAI・機械学習を用いて異常に対する検知システムの高度化を図れれば、専門知識がなくともヒューマンエラーを予防でき、生産の効率化に役立つでしょう。
従来の保全システムでは、「定期的に設備の停止が必要」「故障していない設備のメンテナンスを行う必要があり、無駄なコストが発生」「設備の状態把握が面倒」などといったことが課題でした。
先進的なテクノロジーを持つ予知保全システムを導入すれば、従来の課題を解決に導けます。
さらに、技術・知識のアップロードを継続して行うことで、より正確に予知できる仕組みづくりも構築可能になります。
予知保全の導入を検討しよう
設備をデータ化し分析する予知保全を製造現場に導入することで、設備の故障は事前に検知できるようになります。
故障リスクのある設備を事前にメンテナンスできれば、稼働中に製造ラインがストップするという不測の事態を回避することが可能です。
予知保全システムの導入は、生産現場の生産性の向上や稼働率アップに欠かせません。
しかし、予知保全に関する正しい知識を持たないままシステム構築を実施してしまうと、その効果を最大化することはできません。
予知保全を導入する設備の目的や目標を明確化し、社内でのコミュニケーションを図りましょう。
プロの視点での仕組みづくりも重要な要素です。すべてを社内でやろうとするのではなく、予知保全メーカーとも密に相談しながら適切な対策を練ってください。
なお、弊社予知保全ソフトの「機工報」を取り扱っています。
多数の導入実績があり、高い評価得ているので興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
詳しい事例については下記の記事で解説しています。