食品工場や下水処理場などから排出される残渣の処理に困っている事業者の方は少なくありません。
産業廃棄物処理業者に委託するのが従来通りの方法ですが、多額のコストが掛かったり環境改善の視点から問題視する方が増えたためです。
とはいえ、一言に残渣といっても事業によってそれぞれ特徴があり、それぞれの事業に合わせた処理方法を選定するのは容易ではありません。
そのため、本記事では残渣処理方法や活用事例について紹介していきます。
残渣処理方法でお困りの方は、ポイントをよく理解したうえで、自身に合った処理方法を検討してみてください。
残渣処理の方法5選
残渣処理として一般的に行われていたのが焼却処理や埋め立て処理です。
しかし、二酸化炭素の削減など環境問題への意識の高まりから、最近では残渣処理自体が見直されています。
ここでは焼却や埋め立て以外の残渣処理方法を5つ紹介しますので、ポイントをよく理解したうえで、自身に合った処理方法を選んでください。
堆肥にする
野菜のつるや茎、葉、病害虫に侵害されたり大きさや形が悪く食べられない部分などの残渣は、堆肥として活用することができます。
これらの残渣を米ぬかや油かすなどと混ぜ合わせて発酵させることで、質の良い堆肥を生成することが可能です。
このように、農作物の残渣を堆肥にすることで、循環型の環境に良い取り組みが可能であるため、農作物の残渣にお困りの方は堆肥化を検討してみてください。
なお、堆肥化の方法が分からないという方には、簡単に堆肥化できる堆肥化装置があるため、そちらの導入もおすすめです。
燃やして燃料にする
残渣を燃やして燃料にする方法もあります。
食品工場などの加工工程から発生する残渣を燃料として活用して、生み出したエネルギーで蒸気を発生、蒸気でタービンを回し発電しているケースも少なくありません。
残渣を廃棄物として処理するだけでなく、エネルギーを生み出すことで燃料・電力コストの低減、環境負荷低減にも繋がるため、大量の有機廃棄物が出る場合は検討してみてください。
セメント原料として利用
可燃物を焼却処理した際に発生する残渣は最終処分場に埋められるケースがほとんどです。
しかし、可燃物を焼却処理した際に発生する灰は水洗脱塩処理することにより、セメントの原料として再利用できます。
本来は、費用をかけて処分していた残渣をセメント原料に変換することで、セメント会社に売却することが可能です。
焼却灰が大量に出る場合は、そういった利活用方法も検討してみてください。
炭化する
残渣処理で最もおすすめな方法は、炭化装置などを活用して炭化する方法になります。
炭化処理には以下の特徴があるためです。
・工場などから発生する廃棄物や野生鳥獣駆除の際に捕獲された病気を持った鳥獣など幅広い残渣処理ができる
・炭化したものは肥料や燃料として活用することができる。
・炭素固着することができるため、廃棄物を焼却処理する際に発生する二酸化炭素の排出を抑えられる
資源の有効活用だけでなく、地球温暖化対策としても注目度の高い処理方法になります。
特に近年では炭素税などの導入も検討されているため、早いうちに取り組んでおくことがおすすめです。
なお、炭化装置については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
炭化装置・炭化炉の種類や特徴は?燃料や原料になるバイオマスについても解説
適切に処理して下水へ流す
ディスポーザーは生ゴミを細かく粉砕、水道水とともに排水管に排出する生ゴミ処理粉砕機です。
一般的にはキッチン排水口のすぐ下に設置され、家庭ゴミ処理に活用されています。
この仕組みを活用して、大型のディスポーザーを工場などに設置し、生ゴミなどの残渣をディスポーザーで適切に処理して下水へ流すという方法も注目されています。
残渣処理で炭化が注目されている理由とは?
残渣には様々な処理方法がありますが、近年では残渣を炭化する方法に注目が集まっています。
CO2削減に大きく寄与できる処理方法であるうえに、廃棄物を資源に変換できるためです。
ここでは、炭化処理に注目が集まる理由について、もう少し詳しく解説していきましょう。
廃棄物を資源に変換できる
残渣処理で炭化が注目されている最大の理由が「廃棄物を資源に変換できる点」です。
炭化処理を行い生成された炭は、燃料や土壌改良材、水質改良材として活用することができ、本来であれば廃棄物であったものを資源化して売却することができます。
残渣の処理方法として主流になっている焼却処理や埋め立て処理のように、ただ処理費を掛けるだけでなく収入を得ることができるため、多くの企業が検討を始めています。
処理時に二酸化炭素を排出しない
残渣処理で炭化が注目されている理由の一つに、「処理時に排出される二酸化炭素を削減できる」ことが挙げられます。
炭化する工程の中で、燃焼させた場合に排出される炭素を炭に固定することができるためです。
そのため、焼却処理時と比較すると二酸化炭素の排出量が非常に少なく、地球環境に優しい処理方法になります。
異常気象や気温上昇などで地球温暖化問題が世界中で課題となっている昨今では、二酸化炭素削減は非常に重要なテーマであるため、非常に注目を集めています。
軽量化できるうえに腐らないため保管しやすい
残渣処理で炭化が注目されている理由として「軽量化できるうえに腐らないため保管しやすい点」もあります。
残渣の種類にもよりますが、残渣は水分を多く含んでいることが多いことから、非常に重たいうえに腐ったりカビたりする可能性が高く、処理や保管に困るケースが少なくありません。
しかも、残渣を処理するまでの間に保管しておくための保管料としても多額の費用がかかるため、費用が嵩んでしまいます。
その点、炭化処理では水分を含んだ残渣も処理することが可能なうえ、処理後の炭は軽量で腐ることもありません。
そのため、保管のコストや移動コストを削減できます。
残渣処理で炭化を活用している事例
ここまで残渣の処理方法として炭化処理がおすすめだとご紹介しました。
では、実際に企業ではどのように残渣を処理しているのでしょうか。
ここでは3社の事例を紹介していきます。
残渣処理でお困りの方は、ポイントを把握したうえで、適切に処理を行うことが重要です。
食品残渣から炭化カーボンへ
静岡県で産業廃棄物処理を行っている株式会社浜松管理サービスは、食品残渣から炭化カーボンを作り出す取組みを行っています。
具体的には、食品残渣を炭化触媒「かすみ」を使って炭化、「炭化カーボン」として再資源化することで資源の有効活用を行うというものです。
生成された純度の高い粉末状の炭化カーボンは、水を浄化させる活性炭などの原材料としたり、ペレット化(かすみカーボン)して燃料として再活用しています。
なお、残渣を焼却処理した際には二酸化炭素やダイオキシンが少なからず発生しますが、炭化触媒「かすみ」を使った炭化では、二酸化炭素やダイオキシンは一切発生しません。
そのため、地球環境にも優しい取り組みとして注目を集めています。
出典:株式会社浜松管理サービス
生ゴミ残渣から土壌改良材を作る
関東で食品資源リサイクル機器やプラチナ触媒式脱臭装置、包装食品資源分別機などの販売を行っている株式会社根上産業は、炭化装置を活用して生ゴミ残渣から土壌改良材を作る取組みを行っています。
株式会社根上産業の炭化装置は、焼却処理時では発生する二酸化炭素を軽減できるうえに、炭化処理で発生する熱を利用して蒸気を発生させ発電もできるエコ仕様です。
焼却処理時の熱利用に加え、本来捨てられる生ごみから生成された炭は土壌改良材や水質浄化材として利用されており、正に資源を余すこと無く有効活用できる効率的な処理と言えます。
出典:株式会社根上産業
有害鳥獣駆除時の残渣炭化事例
石川県羽咋市では、有害鳥獣駆除時の残渣炭化に取り組んでいます。
高齢化などの影響で離農が進んでいた羽咋市では、「がんばる羽咋創生総合戦略」を策定し都市部からの移住推進について模索。
一方で、山間地域などでは収穫時期になるとイノシシなどの有害鳥獣に作物を食い荒らされるなどの被害が出ていました。
そういった背景から発足したのが「のとしし大作戦」という、有害鳥獣を捕獲してジビエ肉として普及させる取り組みです。
この取り組みにより有害鳥獣の駆除には成功したものの、イノシシの皮や骨、内臓まで処理しきれずに、焼却処理や埋め立て処理を行うことに。
しかし、それではイノシシをまるごと有効活用することにはならないと「炭化装置」を導入し、炭化処理することで生成された炭を再利用する取り組みを始めました。
生成された炭は浄水材や土壌改良材として再利用して資源の有効活用に繋がる取り組みになり、有害鳥獣駆除だけでなく資源の有効活用にも繋がっています。
廃棄物に合わせた残渣処理方法を選ぶようにしよう
残渣の処理を検討する際は、自社の廃棄物の実情に合わせた処理装置を選択することが非常に重要です。
とはいえ、廃棄物の実情に合わせた処理装置を選ぶのは容易ではありません。
弊社なら処理装置の最適な方法をご提案できるので、一度問い合わせしてください。
豊富な経験と専門的な知識を基に、最適な装置をご紹介いたします。
なお、この記事で紹介したポイントは以下です。
この記事のまとめ
・残渣は焼却や埋め立てされて処理されてきた
・残渣は堆肥や燃料として利用できる
・炭化して資源の有効活用を行う方法がおすすめ
・残渣処理で炭化を活用している事例3選を紹介
それぞれポイントをよく理解したうえで、自身の廃棄物の実情に合わせた処理を行ってください。