環境問題への意識が高まっていることにより、廃棄物処理方法の再検討を始めている方が増えています。
廃棄物の処理は埋め立てや焼却が主流となっており、環境汚染が懸念されているためです。
このため、炭化炉を検討する方も増えていますが、安価に処理を行える焼却炉とどちらを導入すべきかで悩む方も少なくありません。
炭化炉、焼却炉のどちらにもメリット・デメリットが存在するため、悩む気持ちは十分に理解できます。
そこで、この記事では炭化炉と焼却炉はどちらを導入するべきか!メリット・デメリットを比較していきます。
紹介するポイントは以下です。
この記事のまとめ
・炭化炉は地球環境に優しい
・炭化炉で処理する際に匂いや煙を抑制しながら処理ができるので焼却炉と比較して建設場所を限定されない
・炭化炉は導入費用が高額になりがち
・焼却炉は多岐に渡る廃棄物の処理が容易にできる
・焼却炉は二酸化炭素や有害ガスなどにより地球環境に悪影響を及ぼしている
それぞれポイントをよく理解したうえで、自身にあった処理装置の導入を検討してみてください。
炭化炉とは
炭化炉は廃棄物などの有機物を熱分解させることで炭にできる装置です。
焼却処理と異なり炭素を固着させることができるため、二酸化炭素排出削減することができます。
また、本来捨てられるはずの廃棄物を炭にすることで、肥料や燃料などの有機性の資源として再利用できるため、資源の有効活用にもつながる環境に優しい処理方法です。
SDGsに取り組み地球環境へ貢献したいと考えている方や企業は、炭化装置の利用を検討してみてください。
炭化炉の種類
炭化炉は大きく分けて「連続炭化装置」と「単式炭化装置」の2種類があります。
連続炭化装置・単式炭化装置はそれぞれ特徴が異なるため、炭化炉の導入を検討されているなら、それぞれの違いを詳しく把握しておくことが重要です。
連続炭化装置
連続炭化装置は名前の通り、連続して炭化することが出来る装置になります。
メリット・デメリットは以下を確認してください。
●メリット
・大量の原料を炭化することが可能
・自動運転が可能
・熱効率が良い
●デメリット
・細かい原料でないと運用できない
・含水率が高いものは乾燥の前処理が必要
出典:機械部品・工作機械|機械工具取扱専門商社 金沢機工株式会社|炭化装置
上記のようにデメリットもありますが、「大容量の原料」を炭化したい方は、連続炭化装置がおすすめです。
単式(バッチ式)炭化装置
単式(バッチ式)炭化装置は、連続ではなく1回1回廃棄物を入れて炭化する装置のことです。
メリット・デメリットは以下をご確認ください。
●メリット
・煙がほとんど発生しない
・原料のサイズを選ばない(限界はある)
・4tから10t車で輸送可能
・自動運転も可能
・高含水率の原料を処理できる
・熱エネルギーを回収・利用するサーマル
リサイクル
・完全バイオマス利用が可能
●デメリット
・多すぎる原料に対応できない
・投入・回収に手間がかかる
出典:機械部品・工作機械|機械工具取扱専門商社 金沢機工株式会社|炭化装置
高含水率の原料や伐採材や竹などの大きな原料を炭化したい場合は、単式炭化装置がおすすめです。
炭化炉を導入するメリット
炭化炉は廃棄物などの資源を熱分解させることで炭にする装置であるため、炭化炉を使うことで本来捨てられるはずの廃棄物を、肥料や燃料などの有機性の資源に変換することができます。
このことが炭化炉を導入する最大のメリットですが、他にもメリットは多数あるので詳しく紹介していきましょう。
地球環境に優しい
炭化炉を導入するメリットで真っ先に挙げられるのは、地球環境に優しい点です。
炭化により炭に炭素を固着させられるため、焼却炉による処理と比較すると廃棄物の処理時に発生する二酸化炭素の排出を抑えることができます。
したがって、二酸化炭素削減の取り組みの実施を検討されている企業には、炭化炉がおすすめです。
炭化した炭を利用できる
炭化炉を使用して発生した炭は、燃料や自然堆肥などの有機性の資源として利用することが可能です。
反面、従来の焼却処理で廃棄物を焼却して出てきた灰は、産業廃棄物として処理されています。
したがって、焼却炉から炭化炉に入れ替えることで、産業廃棄費を減らせるうえに場合によっては高額で売ることができるため、採算性の見直しが期待できます。
含水率が高いものも処理が可能
炭化炉には含水率が高いものでも処理ができる方式があります。
このため、含水率が90%の原料や丸太でもそのまま炭化が可能です。
一方で、焼却処理では上記の丸太のように含水率が高いものは焼却処理できず、そのまま廃棄されてきました。
そのまま廃棄されていた廃棄物も炭化炉なら資源として有効活用することができるため、含水率が高い原料に悩んでいる方はぜひ弊社にお問い合わせください。
匂いや煙を抑制しながら処理ができる
炭化炉は匂いや煙を抑制しながら処理することが可能です。
一方、焼却処理の場合は大量の煙や匂いが発生するため、処理場を建設する際に周囲に何もない場所を選ぶ必要があります。
しかも、炭化炉の中には小型のものもあるため、設置範囲に限りがあるところでも設置することが可能です。
炭化炉を導入するデメリット
炭化炉を導入するにあたって最大のデメリットは、炭化炉導入にかかる費用が高額(数百万円〜)となる点です。
解説したように、炭化炉にはさまざまなメリットがあるため、炭化炉導入を検討されている方は多いですが、費用面の問題で導入を諦めてしまう方も少なくありません。
しかし、環境に良い炭化炉ですから使用できる補助金が多数あり、それらを活用することで費用負担を下げることができるため、補助金をうまく活用すればデメリットを無くすことができます。
なお、炭化炉の導入を検討されている方は補助金について詳しく紹介していますので、下記の記事を確認してみてください。
炭化炉・炭化装置を活用する際の補助金は何がある?活用事例も併せて紹介 金沢機構
焼却炉とは
焼却炉とは、家庭ごみや工場の固体廃棄物などを焼却処理するための装置です。
廃棄物などを焼却処理することにより、ごみの体積を減らせるだけでなく、処理とともに排出された有害物質の無害化を行うこともできます。
ただし、焼却時に発生する二酸化炭素が地球環境温暖化促進に繋がっているというデメリットは理解しておかなければなりません。
焼却炉の種類
焼却炉には、「火格子焼却炉」や「床焼却炉」のように様々な種類があります。
その中でも我々の日常生活から排出される家庭ごみは、火格子焼却炉(ストーカー炉)で処理されるケースが多いです。
ここでは、上記のような焼却炉の種類や、どのような廃棄物が対象になるかなどについて詳しく紹介していきます。
火格子焼却炉(ストーカー炉)
火格子焼却炉(ストーカー炉)とは、ごみを火格子(ストーカ)の上に並べた状態で乾燥・加熱し、撹拌・移動させながら焼却するタイプの焼却炉です。
日本の焼却施設が誕生して50年以上経ちますが、火格子焼却炉(ストーカー炉)が最も多く稼働している焼却炉となります。
床焼却炉
床焼却炉とは高温に耐えられる耐火物を敷き詰めた炉床上に廃棄物を供給して固定層をつくり、その表面付近に空気を送り込んで燃焼を行う型式です。
火格子焼却炉での焼却に適さないプラスチック廃棄物や、含水率の高い汚泥を処理するのに適しています。
また、焼却炉からの排ガス温度が800℃~850℃と非常に高温のため、臭気成分を完全分解できるのも大きな特徴です。
流動層焼却炉
流動層焼却炉は底部に多孔板、ノズル板あるいは多孔質板などでできた気流分散板を有する円筒形の焼却炉です。
分散板下部から上向きに高温ガスを送入して炉内に充填した流動媒体(珪砂など)を浮遊懸濁(この状態を保った層を流動層という)させ、廃棄物などを燃焼させる仕組みで、含水率の高い汚泥や工業廃棄物などの処理ができます。
焼却炉を導入するメリット
焼却炉を導入するメリットには、廃棄物処理費を削減できる可能性があるなどのメリットがあります。
これらのメリットを理解しておくことで、焼却炉と炭化炉を比較する際の判断材料にできるので、以下で解説している内容を参考にしてみてください。
廃棄物処理費を削減できる可能性がある
廃棄物処理費を削減できる可能性があります。
一般的に廃棄物が発生した場合は、産業廃棄物業者と業者委託を行い、廃棄処分するケースが多いです。
しかし、毎回業者委託をしていると費用がかさむため、経営を圧迫してしまう可能性があります。
その点、焼却炉を導入することで多額の初期投資はかかるものの、毎回の業者委託費用を抑えることが可能なため、結果として経営にポジティブな影響を与える可能性が高いです。
多岐に渡る廃棄物の処理が容易にできる
焼却炉を導入すると、多岐に渡る廃棄物の処理ができます。
一方、焼却以外の方法で廃棄物を処理する場合、廃棄物の分別作業などの手間がかかってしまいます。
このように、分別の手間を省くことが可能なのが焼却炉の大きなメリットです。
焼却炉のデメリット
焼却炉には廃棄物処理費のコストを下げられる点や多岐に渡る廃棄物の処理が容易にできるなどのメリットがある反面、デメリットがあるのも事実です。
焼却炉を使用する一番大きなデメリットとしては、廃棄物を燃やすときに不完全燃焼によるダイオキシンや二酸化炭素などの有害ガスが発生し、地球環境に悪影響を及ぼしてしまう点が挙げられます。
異常気象や干ばつなどを発生させる地球温暖化問題は深刻となっているため、環境問題に取り組みたい企業やすでに取り組んでいる方には、焼却炉はおすすめできません。
炭化炉と焼却炉を徹底比較
ここまで炭化炉と焼却炉について詳しく紹介してきました。
廃棄物などを処理するのに炭化炉、焼却炉は、それぞれの異なるメリット・デメリットが存在しているため、どちらを導入するか迷われている方は少なくないです。
そのため、ここでは炭化炉と焼却炉について以下で徹底比較しています。
●炭化炉
・処理温度:200〜500度
・二酸化炭素発生有無:少ない
・焼却処理後の利用:燃料・肥料など
・メリット:環境に優しい資源の有効活用ができる
・デメリット:焼却炉と比べると値段が高い(自治体によっては補助金で導入できるケースもある)
・費用:数十万円〜
●焼却炉
・処理温度:500〜1000度
・二酸化炭素発生有無:多い(不完全燃焼時はダイオキシンが発生)
・焼却処理後の利用:なし(灰を産廃処理する必要がある)
・メリット:多岐に渡り処理が可能
・デメリット:環境改善に貢献できない
・費用:数万円〜(家庭用含む)
炭化炉と焼却炉のどちらを導入しようか悩んでいる方は、上記の比較内容を参考にしながら、自身にあった設備を導入してみてください。
メリット・デメリットを理解して最適な装置を選ぼう
炭化炉や焼却炉を選ぶ際のポイントとして、自社の廃棄物の実情に合わせて選択することが重要です。
とはいえ、実情に合わせた処理装置を選ぶのは容易ではありません。
その点、金沢機工なら焼却炉・炭化炉だけでなく、他の処理装置も含めてお客様に最適な装置をご提案できますので、一度問い合わせしてください。
この記事で紹介したポイントは以下です。
この記事のまとめ
・炭化炉を導入するメリットは地球環境に優しいこと
・炭化炉で処理する際に匂いや煙を抑制しながら処理ができるので周囲を気にしなくても良い
・炭化炉を導入するデメリットとして処理量のわりに炭化炉導入にかかる費用が高額であることが挙げられる
・焼却炉を導入するメリットは多岐に渡る廃棄物の処理が容易にできること
・焼却炉のデメリットは地球環境に悪影響を及ぼすこと
内容を参考にして、廃棄物の実情に合わせて炭化炉・焼却炉を選択してください。