地球規模で大きな課題として捉えられているものの一つに、異常気象や気温上昇を引き起こす地球温暖化があります。
この地球温暖化の主な原因は、工場や家庭から排出される二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスの増加です。
先進国がこれまで無配慮に温室効果ガスを排出してきた結果、大気中の濃度が高まり、様々な悪影響を及ぼすようになってしまいました。
そうした中で、地球温暖化対策として近年注目を集めているのが「炭化装置」です。
炭化装置は捨てられるはずの廃棄物を炭化する装置のことで、使い方によっては大気中の二酸化炭素を削減する効果を持つため、様々な行政や企業から注目を浴びています。
しかし、炭化装置の魅力はそれだけではありません。
廃棄物を炭化した炭化物は、肥料・消臭剤・調湿材・浄水材などの有機性の資源として再利用できることも大きな魅力です。
とはいえ、炭化装置は安くなく、設置するには多額の費用がかかるといった懸念があります。
実際、導入したいが、金額が問題で導入を諦めたという方も多いです。
そのため、本記事では、炭化炉・炭化装置を活用する際に利用できる補助金について解説していきます。
脱炭素化社会に向けた炭化装置を使った取り組みに対しての活用事例についても紹介していくので、導入を検討する際の参考にしてください。
本記事でのポイントは以下です。
この記事のまとめ
・炭化装置・炭化炉とは
・食品残渣の炭化装置活用事例
・有害鳥獣の炭化装置活用事例
・農業、放置竹林の炭化装置活用事例
・鳥獣被害防止総合対策交付金
・森林・山村多面的機能発揮対策交付金
・事業再構築補助金の概要(コロナによる新事業への補助金内容)
・炭化装置・炭化路導入における補助金の活用事例
それぞれについて解説していきます。
脱炭素化社会に向けた炭化炉・炭化装置の特徴や活用事例
脱炭素化社会に向けて注目を集めている炭化炉・炭化装置は、現時点でも様々な用途で使用されています。
例えば、捕獲した有害鳥獣の処理や食品残渣の処理などです。
ここでは、これらの活用事例と炭化装置の特徴について詳しく紹介しましょう。
炭化装置の特徴と活用事例を理解しておくことで、ご自身の状況に炭化装置が適しているかを見極めることができるはずです。
炭化装置・炭化炉とは
炭化装置・炭化炉とは、廃棄物などの有機物を熱分解して炭にすることができる装置です。
従来の燃焼処理との大きな違いは、二酸化炭素排出を大幅に抑えることが可能な点が挙げられます。
焼却処理は二酸化炭素を多量に発生させていましたが、炭化装置なら、使い方次第でむしろ大気中から二酸化炭素を減らすことができます。
しかも。炭化することにより発生した炭は、燃料や自然堆肥などの有機性の資源として再利用できるので、一切無駄がありません。
なお、炭化装置の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。
炭化装置・炭化炉の種類や特徴は?燃料や原料になるバイオマスについても解説
気になる方は、ぜひ確認してみてください。
食品残渣の炭化装置活用事例
食品残渣の処理にも炭化装置は活用されています。
例えば、羊羹で有名な株式会社虎屋が行っている羊羹の切れ端や、賞味期限が切れたお菓子などの食品残渣を、炭化装置で処理して資源として再利用している事例です。
切れ端や賞味期限が切れたお菓子は、捨てるはずの食品廃棄物でしたが、炭化装置を活用することで、資源として有効活用でき、環境に良い影響を与えています。
有害鳥獣の炭化装置活用事例
近年注目を集めている有害鳥獣(ジビエ)の取組みでも、炭化装置は使用されています。
有害鳥獣を捕獲したあとに、ジビエ肉として利用される部分以外を、炭化装置を活用して炭化、肥料として資源化しているのです。
実際、石川県羽咋市では、全国初となる「イノシシ用の炭化装置」の導入を行っており、捕獲したイノシシを全て有効活用しています。
肥料として登録もされており、環境に考慮しながら有害鳥獣による被害を減らす取組みの一例として注目を集めている状況です。
出典:【動画付き】能登のイノシシを利活用 羽咋市と地域一体で取り組む「のとしし大作戦」|マイナビ農業
放置竹林の炭化装置活用事例
NPO法人竹もりの里の取組は、放置竹林の竹を材料に、炭化装置を使い、農業用土壌改良剤として有効活用しています。
これまで竹は樹木と違い芯が空洞であるため、炭化できる量が少ないうえに、炭化時間や作業コストもかかることから、竹炭の活用は一般的ではありませんでした。
しかし、NPO法人竹もりの里では、放置竹林を放っておくことができないという思いから、炭化装置を使って竹炭を製造、農業利用しています。
出典:放置竹林を農業に有効活用、「“厄介者”が有機野菜の源に」マイナビ農業
農業での炭化装置活用事例
農業でも炭化装置を活用して廃棄物を資源化する取組みは数多くされており、今や炭化装置は農業をするうえで重要な存在となっています。
例えば、兵庫県南あわじ市では傷んで商品にならない玉ねぎや玉ねぎの皮を、炭化装置を使い炭化したうえで肥料として利用。
また、福井県にあるJAテラル越前では、籾殻を炭化装置で炭化することにより再利用しています。
どちらも捨てられるはずの廃棄物を、炭化装置を活用して有効活用した事例です。
炭化炉・炭化装置の導入で利用できる補助金
脱炭素には欠かせない炭化炉・炭化装置ですが、設置に多大な費用がかかることが大きな課題です。
現状、それを解決するためには補助金を頼るしかありません。
炭化炉・炭化装置の導入で利用できる補助金について詳しく紹介していきましょう。
ポイントは以下の4つです。
・鳥獣被害防止総合対策交付金
・森林・山村多面的機能発揮対策交付金
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
・事業再構築補助金の概要(コロナによる新事業への補助金内容)
炭化炉・炭化装置の導入で利用できる補助金について概要を知っておいてください。
鳥獣被害防止総合対策交付金
鳥獣被害防止総合対策交付金は、鳥獣被害に対して侵入防止柵、焼却施設や捕獲技術高度化施設等の整備、都道府県が行う広域捕獲に係る調査、捕獲活動、人材育成等の支援や新規猟銃取得に係る支援、ジビエ利活用の取組みなどを支援する内容です。
なお、令和4年度の鳥獣被害防止総合対策交付金としての予算は100億300万円で、野生鳥獣のジビエ利用量を令和7年までに令和元年度から倍増させることや農作物被害を及ぼすシカやイノシシの生息頭数を令和5年までに平成23年度から半減させる事を目標として掲げています。
出典:「鳥獣被害防止総合対策交付金について 令和3年度版」 農林水産省
森林・山村多面的機能発揮対策交付金
森林・山村多面的機能発揮対策交付金とは地域住民等による森林の保全管理活動や森林の手入れ等の共同活動取組を支援する内容です。
美しい里山林を維持するための景観保全・整備活動と侵入竹の伐採・除去や利用に向けた取組みを行う地域環境保全タイプと森林資源を木質バイオマス、炭焼き、しいたけ原木等に活用することを目的とした森林資源利用タイプがあります。
ただし、交付金の内容はそれぞれ取組内容によって変わるので、林野庁ホームページから確認するようにしてください。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業や小規模事業者等が取り組む、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善による生産性の向上を行うための設備投資等を支援する補助金です。
補助金上限は一般型1,000万円、グローバル展開型は3,000万となっています。
申請による不明点があれば、ものづくり補助金事務局サポートセンター(受付時間:10:00~17:00)に問い合わせてみてください。
出典:令和元年度補正・令和二年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領
事業再構築補助金の概要(コロナによる新事業への補助金内容)
事業再構築補助金は、コロナの影響で厳しい状況にある中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合等を対象として、中小企業等の思い切った事業再構築を支援する内容です。
ウィズコロナやポストコロナの時代の社会変化に対応するために、新分野展開や事業・業種転換、事業再編等の規模拡大を目指す中小企業などの挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
補助金額は支援内容や従業員数によって変わるので、中小企業庁ホームページから確認が必要です。
参照:事業再構築補助金
炭化装置・炭化炉導入における補助金の活用事例
炭化装置・炭化炉導入にあたり、課題となる多大な設置費用が必要なことは、補助金の制度を活用することで解決に繋げることができます。
実際、補助金を活用して炭化装置を導入している企業も少なくありません。
では、炭化装置・炭化炉導入における行政や企業による補助金の活用事例を紹介しましょう。
ポイントは以下の4つです。
・鳥獣被害防止総合対策交付金の活用事例
・森林・山村多面的機能発揮対策交付金の活用事例
・ものづくり補助金の活用事例
・事業再構築補助金の適用活用事例
それぞれについて解説していきます。
鳥獣被害防止総合対策交付金の活用事例
羽咋市は、鳥獣被害防止総合対策交付金などを活用して設置した電気柵や檻、罠で、地元住民と協力して身近に現れるイノシシを捕獲しています。
さらに、その捕獲したイノシシは、イノシシ肉を利用した商品やお土産などに利用され、「のとしし大作戦」と名付けて、地域振興を行いながら鳥獣対策に繋げています。
もちろん、鳥獣被害防止総合対策交付金が利用されているのは、電気柵や檻、罠だけではありません。
食べられない骨や皮や内臓を丸ごと有効活用できる炭化装置にも利用されています。
具体的には、「のとしし大作戦」で利用したイノシシの残渣を炭化装置で炭にして、農作物や植樹用の肥料として再利用しているという活用事例です。
出典:【動画付き】能登のイノシシを利活用 羽咋市と地域一体で取り組む「のとしし大作戦」|マイナビ農業
森林・山村多面的機能発揮対策交付金の活用事例
千葉県長南町では、放置された竹林の整備を行うために、森林・山村多面的機能発揮対策交付金を活用し、キャタピラー付きの樹木粉砕機の購入や竹林へ持ち運びができる炭化装置の購入を行いました。
この取組みにより、放置竹林問題は大きく改善されています。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の活用事例
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金を活用したM社の取組事例を紹介します。
M社では元々農業機械を中心として販売・レンタル・修理サービスを中心に事業展開を行っていました。
農業機械の販売やレンタルを通して多くの農家の方と知り合い、その中で時間や労力をかけて収穫しても商品にならない作物を廃棄しているという課題に直面したのが補助金活用のきっかけです。
補助金を活用して炭化炉の設備投資を行い、今まで捨てられていた廃棄物を炭化炉により有機資源化し再利用することで、農家の方を支える取組を行っています。
事業再構築補助金の適用活用事例
事業再構築補助金を活用したA社の事例です。
A社は北陸地方を中心に旅行代理店を行っており、現地ツアーの企画や運営、地元の魅力を発信する取組みで観光客誘致を行っていました。
しかし、長引くコロナ禍で経営に大きな打撃を受けて、倒産間際に。
そんな中で、社長の清水さんが事業再構築補助金の存在を知り、思い切って事業の再構築をすることにしたそうです。
清水さんが最初に目を付けたのが、社会問題となっている放置竹林でした。
北陸で問題となっている放置竹林を伐採・整備し、その竹を炭化装置で竹炭に変え、販売するという事業を考えたのです。
今では、事業再構築補助金を利用して炭化装置を導入。
竹炭を燃料・肥料・消臭剤・調湿材として販売しています。
まとめ
この記事では、炭化炉・炭化装置の導入に活用できる補助金の概要と、脱炭素化社会に向けた取組みに対しての補助金活用事例を紹介してきました。
少しおさらいしてみましょう。
炭化炉・炭化装置は廃棄物などの有機物を熱分解して炭にする装置であり、二酸化炭素の排出量削減や廃棄物の問題解決に最適であることから、注目を集めている装置です。
しかし、装置を導入するには多大な費用がかかることが課題でした。
ところが、この課題も、補助金を利用することで解決可能です。
この記事で解説したポイントは以下になります。
この記事で解説したポイント
・炭化装置・炭化炉で炭化したものは有機性の資源として再利用ができる
・食品残渣や放置竹林の処理にも炭化装置は活用されている
・鳥獣被害防止総合対策交付金は鳥獣被害を軽減するための補助金
・森林・山村多面的機能発揮対策交付金は森林の保全管理活動を支援
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業などの革新的な取組を支援
・事業再構築補助金は中小企業等の思い切った事業再構築を支援
・補助金の活用事例を紹介
この記事を読んで、炭化炉・炭化装置の導入時に補助金を利用する参考にしてください。