食品ロスは先進国をはじめとして、今や見逃すことができない世界的な課題となっています。
家庭ごみだけでなく、企業による食品ロスの量も膨大です。
企業の食品ロス削減への取り組みは、コストの削減や環境保護、社会貢献、企業イメージの向上など、様々なメリットがあります。
食品ロスの削減は、今後企業運営を継続する中で、企業が果たすべき社会的課題として、より責任が求められることになるでしょう。
本記事では、食品ロス問題に取り組むメリットと、その事例の詳細を紹介しています。
食品ロスへの取り組みを検討されている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
企業が食品ロス対策に取り組むメリット
企業が食品ロス削減に積極的に取り組むことによって、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
考えられるメリットを三つ、ピックアップしてみました。
食品廃棄コストの削減
食品を取り扱うメーカーや、食品を加工、生産する企業にとって、過剰在庫による食品ロスは生産コストや廃棄コストがかさむ原因となります。
余計なコスト増加は企業運営の足かせとなるでしょう。
また、食品ロスの削減は生産、廃棄、人件費など様々なコスト削減にもつながります。
企業イメージの向上
食品ロスへの取り組みを対外的にアピールできれば、エンドユーザーや投資家へ向け、効果的なブランディングを行うことができます。
かつて就職先を選ぶ時の基準として、社会貢献がキーワードとなっていましたが、現在はより具体的に、環境問題や社会的な課題への取り組みが重視されるようになりました。
販促のみならず、優秀な人材を確保するためにも、社会的な課題への取り組みは重要なキーワードとなっています。
食品ロス問題は、SDGsとも関連性があるため、効果的にアピールしておきたいところです。
食品ロス対策に取り組む企業の事例
実際に食品ロス削減に取り組んでいる企業の事例を8つ、紹介します。
食品販売店A社の事例
予知保全ソフトは、食品販売店でも活用されています。
在庫管理だけでなく、冷蔵庫や冷凍庫の故障を予知することで、食品の劣化を防いだり、故障による休業を未然に防いだりすることが可能です。
また、設備の稼働状況をモニタリングすることで、エネルギー消費量を削減し、生産性を向上させることもできます。
食品販売店A社では、予知保全ソフトを用いて、全体の生産性向上と食品ロス削減という成果を上げました。
予知保全ソフトは、食品ロスとの関連性が薄いようにも思われますが、食品を扱う機器を全体で管理することは、効率的な生産の基本ともいうべき重要なポイントです。
なお、金沢機工では「機工報」という予知保全ソフトを提供しています。
気になる方は問い合わせしてみてください。
また、下記の記事で予知保全について詳しく解説しているので参考にしてみてください。
小売業B社の事例
AIを用いた食品の在庫管理は、従来の在庫管理方法に比べて在庫の過不足を防ぐことができ、コストを削減できるメリットがあります。
小売業B社では、AIを用いて販売予測を行い、必要な量だけをピンポイントで発注する運用に切り替えました。
AIによる在庫管理は、賞味期限の適正管理にも効果的です。在庫の偏りがなくなり、無駄な賞味期限切れを大幅に削減することに成功しています。
食品製造業者C社の事例
予知保全システムは、食品製造業者にとって、設備の故障を未然に防ぎ、生産性と品質を向上させるために有効なツールです。
食品製造業者C社では、積極的に予知保全システムを導入し、設備のモニタリングなどを通じて、機器の全体管理を行うようにしました。
これにより、異常の検知だけでなく、設備の交換時期なども把握できるようになり、結果として規格外商品の削減を実現しています。
生産性の底上げは食品ロス削減にもつながりました。前述の食品販売業と同様の成果を上げています。
食品の販売業、加工業、製造業にとって、予知保全システムの導入は、企業運営に大きな変革をもたらすでしょう。
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
セブン&アイ・ホールディングスでは、「食品リサイクル率を2030年に70%、2050年に100%にする」、「食品廃棄物量(売上100万円あたりの発生量)を2013年度と比較して2030年に50%削減、2050年に75%削減する」という目標を掲げています。
目標実現に向けての具体的な取り組みとして、2020年5月より、賞味期限が近づいた対象商品に、店頭税抜価格の5%分のnanacoボーナスポイントを付与する「エシカルプロジェクト」を開始しています。ユーザーに賞味期限切れ間近の商品をユーザーに購入してもらうために考案された割引の制度です。
参考:食品ロス・食品リサイクル対策 | サステナビリティ | セブン&アイ・ホールディングス
株式会社マルエツ
首都圏を中心にスーパーマーケットを展開するマルエツでは、常設型の食品寄付ボックスを設置するフードドライブを開始しています。
また、外箱の破損で店舗販売ができない商品のうち、未開封かつ賞味期限内の食料品は、管轄の社会福祉協議会を通じて、子ども食堂、福祉施設、ひとり親世帯などへ提供されています。
対象となる食料品の条件は以下の通りです。
・未開封のもの
・賞味期限が2カ月以上残っているもの
・常温保存のもの
・製造者または販売者が表示されているもの
・成分またはアレルギー表示のあるもの
参考:マルエツ/都内2店舗で「フードドライブ」開始 | 流通ニュース
スターバックスコーヒージャパン株式会社
スターバックスは、2030年までに店舗などから出る廃棄物の50%削減を目指すとともに、店舗を構える地域コミュニティに好影響を与えられるよう活動を継続するとしています。
主な廃棄物となるコーヒー豆のゴミ処理だけでなく、約15%を占める期限切れフードの廃棄量削減も重要課題の一つです。
具体的施策として、ドーナツやケーキ、サンドイッチなどを、店舗の当日在庫状況に応じて、閉店3時間前をメドに20%OFFにて販売しています。
施策による売上の一部は、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえに寄付され、地域の子どもたちの健やかな食育に寄与しています。
参考:スターバックスのフードロス削減のためのプログラム、8月23日(月)からスタート在庫状況に応じて、ドーナツやケーキなどをディスカウントし、売上の一部は子どもたちの食と未来づくりへ貢献
江崎グリコ株式会社
江崎グリコでは、「Glicoグループ環境ビジョン2050」の中で、取り組むべきテーマの一つとして食品廃棄物削減を取り上げています。
具体的には、受給予測を用いた適正な在庫管理、規格外商品のアウトレット販売などを通じて、2050年までに2015年度比で食品ロスを95%削減することを目指しています。
また、賞味期限の表示については、品質劣化が遅く、食べる時に日付を確認する意味が乏しいと思われる商品に関して、日付表示でなく年月表示に切り替えました。
参考:食品廃棄物削減に向けて | 【公式】江崎グリコ(Glico)
キユーピーの事例
マヨネーズやドレッシングを販売する食品メーカーのキューピーグループでも、積極的に食品ロス対策に取り組んでいます。
具体的には賞味期限の表示の変更です。キューピーでは、2018年から賞味期限を年月日から年月表示に変更しました。
変更前までは、月の途中で賞味期限によって流通できなくなっていましたが、変更後は月末まで食品として流通できるようになっています。
その他、賞味期限延長のための取り組みや資源の有効活用を促す情報発信にも積極的に取り組んでいます。
参考:もったいない! みんなで減らそう食品ロス|キユーピーグループ オフィシャルブログ
事例を参考に食品ロスに取り組もう
国内の大手食品メーカーや小売店、飲食店では、すでにAIやIotを駆使した食品ロス問題への取り組みが進められています。
また、食品メーカーでは賞味期限の表示変更や延長など、できるだけ食品を無駄にしないための活動を積極的に行うようになりました。
大手企業だけでなく、中小企業の間でも、積極的な取り組みが期待されているところです。
食品ロス削減の事例をもとに、新たな取り組みをスタートさせてみてはいかがでしょうか。