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食品ロスの現状とは?企業に与える影響も解説

2023.08.17

予知保全

世界でSDGsが取りざたされる昨今、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」を視野に、食品ロス問題がフォーカスされる機会が少なくありません。

 

まだ食べられる食品を捨ててしまう「食品ロス」は、社会や企業にどのような影響をもたらすのでしょうか。

 

本記事では、世界や日本の食品ロス問題を確認しつつ、社会や企業へ与える影響について詳細を紹介します。

 

食品ロス(フードロス)とは

食品ロスはフードロスとも呼ばれますが、簡単に言えば「まだ食べられる食品を捨ててしまうこと」です。


食品の廃棄は様々な現場で行われており、主に生産や加工、小売、消費の各段階で発生しています。

 

各段階での食品ロスの原因は以下の通りです。

 

・生産段階 農作物や家畜の病気、収穫や加工過程での損傷
・流通段階 食品輸送中の損傷や賞味期限切れ
・消費段階 食べ残し、賞味期限切れになった食品の廃棄

 

生産規模が大きくなればなるほど、それに比例して食品ロスも大きくなります。先進国での食品ロス問題は、今や捨て置けない、重要な社会的テーマに発展しました。

 

食品ロスを可能な限り削減することは、多くの食品ロスを出し続けてきた先進諸国の責任と言って差し支えないでしょう。

 

食品ロスの現状

世界と日本における食品ロスの現状を確認してみましょう。

 

世界の食品ロスの現状

 

FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では毎年、食料生産量の3分の1にあたる約13億トンの食料が廃棄されていると報告されています。

 

また、WWF(世界自然保護基金)と英国の小売り大手テスコが2021年7月に発表した報告書「Driven to Waste」によると、毎年世界で栽培、生産された全食品の約40%にあたる25億トンが廃棄されているとされています。

 

各機関の調査によって食品ロスの規模に違いはありますが、地球規模で大規模の食品ロスが起きていることに違いはありません。

 

世界で起こっている食品ロスの背景は、先進国と発展途上国によって違いがあります。

 

発展途上国では、収穫技術の低さや、厳しい気候での貯蔵の難しさなどの理由から、食品の生産や加工の段階で食品ロスが出てしまいます。

 

一方、先進国では、生鮮食品の見た目を重視する「外観品質基準」の厳しさや、小売店での大量陳列、大量販売、また食品を安易に捨てる風潮から、加工、卸小売、外食、家庭の段階で食品ロスが出ています。

 

現在問題となっている食品ロスの多くは、先進国によるものです。

 

日本の食品ロスの現状

 

日本では2019年の食品廃棄物が年間25102万トンも出ており、そのうちの570万トンが食品ロスとされています。

 

国民一人あたりで換算すると、その量は年間45キロです。

 

令和元年度の環境省の調査によると、570万トンの食品ロスの46%にあたる261トンが家庭から出た食品ロスとされています。

 

この現状を踏まえ、日本は2030年度までに、家庭系食品ロス、事業系食品ロスともに半減(2000年度比)させるという目標を設定しています。

 

数値でみると、2000年度の547万トンに対し、2030年度までに273万トンまで削減することになります。

 

令和元年度の食品ロスは570万トンです。2000年度の547万トンと比較して増えている現状を考えると、2030年度の273万トンという目標達成は厳しい道のりになりそうです。

 

食品ロスが企業に与える影響

深刻化する食品ロス問題は、企業にどのような影響を与えるのでしょうか。

 

考えられる影響を三つピックアップしてみました。

 

環境面への悪影響

生産、加工、輸送、消費の各段階で出された可燃ごみは処理場で焼却され、膨大なCO2を排出します。

 

CO2の増加は、地球温暖化を促進し、異常気象の発生や、地域の気候の変化、海水面の上昇、生態系の変化など、様々な面で悪影響を及ぼしています。

 

企業活動が環境に及ぼす影響は大きく、長い目でみると企業活動自体にも支障をきたしかねません。

 

持続可能な社会の実現には、企業単位で環境問題に取り組むことが必須となっています。

 

経済面への悪影響

食品ロスは、企業の収益に影響を及ぼすことも考えられます。

 

その原因の一つは、食品ロスの廃棄費用です。

 

環境省の報告によると、2020年のごみ処理費用は2兆円を超えています。


このごみ処理にかかる費用は年々増加しており、食品ロス問題を改善しないと、いずれは企業の収益悪化にもつながるでしょう。

 

企業イメージへの悪影響

食品ロスの対応を後回しにしていると、食品ロス問題に取り組まない企業として悪いイメージが定着し、エンドユーザーのみならず、投資家からも企業評価を下げられてしまいます。

 

ブランドイメージが良ければ、付加価値を付けた高品質の商品を販売する際にプラスとなりますが、一方でブランドイメージが悪いと、売りたい物が思うように売れない悪循環に陥ることも少なくありません。

 

ブランドイメージの低下は、今後の企業運営に少なからず影響を与えるでしょう。

 

食品ロスの対策



食品ロス削減のために注目を集めている対策を、以下で4つ紹介します。

 

フードドライブ

フードドライブとは、家庭で余っている食べ物を、フードバンクや社会福祉団体に寄付する活動です。

 

フードバンクでは、寄付された食べ物を生活困窮者や障害者、ひとり親家庭など、食料支援を必要としている相手に届ける活動を行っています。

 

フードドライブに寄付できる食品は、未開封の缶詰やレトルト食品、米、パスタ、調味料などです。家庭で余っている食品があれば誰でも寄付することができます。

 

個人でも寄付はできますが、企業単位でのフードドライブ活動はより効果的です。

 

賞味期限の延長

近年、包装技術の著しい進歩によって、食品の賞味期限を伸ばすことに成功しています。

 

商品によっては、数カ月単位の賞味期限延長に成功しているものもあり、賞味期限延長による食品ロス削減に注目が集まっています。

 

各メーカーの企業努力による賞味期限の延長は、大手食品メーカーによる賞味期限の概念の見直しと併せて、今後の食品ロス削減に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

 

予知保全による需要予測

企業がフードロスを削減するには、無駄な在庫を持たないことが重要です。

 

適正な需要が予測できれば余剰在庫を抱えることもなく、食品ロス発生に歯止めをかけることができます。

 

予知保全システムは製造現場でも活躍していますが、食品在庫を適正に管理するために小売店や飲食店などでも有効活用されています。


食品の在庫管理だけでなく、過去のデータに基づいた需要予測など、現在は可能な限り食品ロスを減らす仕組みが構築されつつあります。

 

より正確な需要予測と適切な在庫管理ができれば、食品ロスを大幅に削減することできるでしょう。

 

予知保全を利用した需要予測の事例について下記の記事に詳しく記載しております。

食品業界で予知保全を導入するメリット・デメリットとは?事例も紹介

 

規格外品の販売

先進国では食品の外観を重視し、傷がついた食品を廃棄する風潮がありますが、こと日本においては、その傾向が強いように思われます。

 

近年では、傷がついた食品や規格外の商品を「訳あり商品」、「アウトレット」として正規品よりも安く販売し、消費者の支持を得ているケースも見られるようになりました。

 

今後、異常気象がますます顕在化し、天災による規格外商品が増えることも予想されます。趣向を凝らした規格外商品の販売は、今後より重要になるでしょう。

 

食品ロス対策に取り組む企業事例

食品ロス対策の事例を、フードドライブと予知保全システムの観点から紹介します。

 

フードドライブの事例

株式会社良品計画は2021年9月、環境や社会課題に取り組む店舗として「MUJI新宿」をリニューアルオープンしました。

 

不用品の回収や「もったいない市」の開催など、リサイクル活動に力を入れる一方、食品ロス削減を目的に、NPO団体を通じて食品を必要としている相手に届けるフードドライブにも取り組んでいます。


また、店内レストラン「Café&Meal MUJI」では、店頭のみで提供していたデリメニューのパック詰め販売や、調理する際に出た野菜、果物の皮などの廃棄食材をコンポストし、たい肥化する活動も行っています。

参考:【フードドライブ、はじめました】 | 無印良品

 

予知保全システムを活用した事例

回転寿司チェーン店「スシロー」を運営する「あきんどスシロー」では、レーンを流れるすべての寿司皿にICタグを装着し、売上状況や鮮度の管理を行っています。

 

人気のネタや廃棄された商品データを蓄積し、店舗の込み具合や個々の利用客の着席時間なども踏まえて正確な需要を予測しています。


経験と勘だけで商品の売れ筋や在庫管理をしていたころに比べ、食品ロスの量を大幅に削減することができました。

 

また、コンビニ大手のローソンでは、食品ロスを削減するため、試験的にダイナミックプライシングを導入しています。


その仕組みは、商品に付けられている電子タグを使って賞味期限間近の商品を洗い出し、賞味期限に見合った価格を値札に表示させるというものです。

 

商品情報は実験として使われているLINEアカウントにも表示される仕組みで、対象の商品を購入した場合、LINEポイントが還元されるようになっています。

 


定価販売が当たり前のコンビニ業界でも、少しずつではありますが、賞味期限が近い商品を値引きする流れに移行しつつあります。

 

ちなみに、金沢機工でも需要予測ができる「機工報」というソフトを開発販売しております。

 

興味がある方はお気軽にお問い合わせください。

 

食ロスに取り組もう

先進国では大量の食品を生産し、加工、流通する一方で、まだ食べられる膨大な食品を廃棄している現実があります。

 

生産や加工に要した費用のみならず、食品を捨てるための費用もかかっていることを忘れてはいけません。

 

また、食品の焼却時に発生する温室効果ガスや、埋め立てる際に発生するメタンガスによる地球環境破壊も重大な問題です。

 

食べ物を無駄にしないためにも、家庭で調理する際は適量を心がけ、また買い物に行く前に冷蔵庫の中身を確認するなど、ひと工夫するようにしましょう。

 

外食する際も、食べ切れる分だけ注文し、もし残った場合は持ち帰るなどの心構えを持つことが重要です。

 


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