カーボンニュートラル宣言を菅前総理大臣が発表してから、環境保護への取り組みを始める企業や団体が増えました。
SDGsという言葉が広く知られるようになり、様々な取り組みの指標となっています。
そういった中で、化石燃料の使用を減らす動きが加速しており、新しいエネルギーの研究開発が世界中で行われています。
中でもバイオマス燃料は、現在世界中で期待されているエネルギーの一つです。
今回の記事では、バイオマス燃料とSDGsの関連性について解説します。
当記事の流れは以下のとおりです。
この記事の流れ
● バイオマス燃料とSDGsの関連性
● バイオマス燃料の活用のメリットと事例
今後バイオマス燃料の活用を考えている方には必見の記事です。ぜひ最後まで読んでください。
バイオマス燃料の概要
そもそもバイオマス燃料がどういうものかご存じでしょうか。
「バイオマス燃料」という言葉を聞いたことがあっても、その内容がわからない方も多いと思います。
バイオマス燃料とは
バイオマス燃料とは、動植物の残りかすや廃棄物、動物の排泄物など生物資源を活用し、燃料として利用するエネルギーです。
バイオマス燃料は化石燃料と違って、一部の地域でしか生産できないエネルギー源ではなく、日本でも設備さえあれば大量生産が可能です。
バイオマス燃料の種類と特性
バイオマス燃料には以下の種類があり、それぞれの燃料には以下の用途があります。
バイオマス燃料 |
製造方法 |
用途 |
木質バイオマス |
バイオマスをチップやペレットなどに加工する |
ボイラーの燃料や化学原料、エタノールなど |
バイオエタノール |
バイオマスを発酵・蒸留 |
ガソリンの代替燃料 |
バイオディーゼル |
バイオマスメタノールと化学反応させる |
軽油の代替燃料 |
バイオガス |
微生物の分解でメタンガスを発生させる |
発電燃料 |
木質バイオマスは、樹木の切断時に発生する枝や葉などの廃材、樹皮などが主原料です。
主に薪やチップ系、ペレット系の3種類に分けられ、様々な方法で使われています。
バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを微生物によって分解し、発酵・蒸留させることで精製されます。
海外ではサトウキビやトウモロコシが使われていますが、国内ではサトウキビの絞りかすなどのバガスが原料となっています。
バイオディーゼルは、メタノールと植物油脂を化学反応させ、処理をして精製される燃料です。
海外ではパーム油などが使われていますが、国内では廃食用油を原料にしています。
バイオガスとは、家畜や排泄物などのバイオマスを微生物の働きによって、メタン発酵させて精製する燃料です。
バイオガスによる発電量は小さいため、地産地消に向いています。
また製造工程で発生する発酵残渣の一部は、肥料などへの二次利用も可能です。
バイオマス燃料とSDGsの関連性
バイオマス燃料とSDGsの関連性は以下のとおりです。
● SDGsの目標7の達成に寄与する
● SDGsの目標13の達成に寄与する
● SDGsの目標8と目標9の達成に寄与する
SDGsの目標7の達成に寄与する
バイオマス燃料は、SDGsの目標7番の達成に大きく貢献します。
SDGs目標7番とは、「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」というもので、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」と定義されています。
2030年までに、日本政府は安くて安定した再生可能エネルギーの供給割合を増やす目標を立てました。
再生可能エネルギーとして分類されるバイオマス燃料は、現在研究が進んでおり、今後さらに多くの人が利用すると予想されています。
特にバイオマス燃料の製造工程で使用する化石燃料の削減や、誰もが使えるようにするための技術革新が今後の課題となっています。
参考:外務省
SDGsの目標13の達成に寄与する
バイオマス燃料はSDGsの目標13番の達成にも直接寄与します。
SDGs目標13番とは、「気候変動に具体的な対策を」というものです。
また「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」とも定義されています。
バイオマス燃料はガソリンや軽油など、化石燃料からの代替が期待されています。
温室効果ガスの削減に大きく貢献するこのバイオマス燃料普及のため、各企業が協力して、供給量を増やしていく予定です。
他にもバイオマス燃料の技術が向上すれば、海外にも活躍の場が増え、地球全体で温室効果ガスの削減が可能です。
参考:外務省
SDGsの目標8と目標9の達成に寄与する
SDGsの目標8番と9番は、以下のとおりです。
番号 |
意味 |
定義 |
8番 |
働きがいも経済成長も |
包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する |
9番 |
産業と技術革新の基盤をつくろう |
強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る |
バイオマス燃料を活用すると、地元の資源の有効利用や新しい技術の導入が進み、新規産業の発展が期待できます。
持続的なエネルギーであるため、長期にわたって雇用を生み出せ、失業率の改善にも繋がります。
またエネルギーの自給自足により、インフラの改善や技術革新の環境を整えることも可能です。
バイオマス燃料利用の課題と、その克服がSDGsの取り組みに与える影響
バイオマス燃料の課題と、それを解決することで得られるメリットは以下のとおりです。
解決するべき課題 |
解決するメリット |
● 発電コストが高い ● 発電所の建設許可が下りにくい ● 建設場所が少ない ● 発電効率が化石燃料に比べて低い ● バイオマス燃料の持続可能な生産が難しい ● 燃料生産による生態系の破壊対策 |
● 自給自足でエネルギーを得られる(化石燃料依存からの脱却) ● 環境に優しい(温室効果がガスを排出しない) ● 安定的な生産が可能 |
発電効率の悪さ、発電コストの高さなど、バイオマス燃料の課題が多い中、一番の問題は、燃料を輸入に依存している現状でしょう。
76%の燃料は輸入に頼っており、今後は国内で調達できる環境整備が必要です。また国内で調達するときに、生態系への影響を考えなければなりません。
これらの課題を短期間で解決するのは至難の業ですが、バイオマス燃料の活用が増えれば、化石燃料の輸入依存から脱却できます。
また、環境に優しいエネルギーのため温室効果ガスの排出も削減できます。これはSDGs目標13番や9番などの達成を後押しします。
バイオマス燃料の利用でSDGsに貢献した事例
活用が広がってきているバイオマス燃料について、今回は4つの事例を紹介。
今後バイオマス燃料の活用を考えている方は必ず目を通しましょう。
● バイオマス燃料によるエネルギー供給と貧困削減(SDGs1・7)
● バイオマス燃料とクリーンな生産消費(SDGs12)
● バイオマス燃料と気候変動対策(SDGs13)
それぞれを詳しく見ていきましょう。
バイオマス燃料によるエネルギー供給と貧困削減(SDGs1・7)
バイオマス燃料の活用により、発展途上地域や貧困地域でもエネルギーの生産が可能となり、貧困の改善に成功しました。
たとえばマレーシアでは、燃料であるパーム油の増産によって、経済の発展や技術開発の向上などに貢献しました。
特に農村部では、貧困削減政策としてオイルパーム・プランテーション開発を行い、中国やヨーロッパに向けてパーム油を輸出するまでに至っています。
同時にインドネシアもパーム油の生産を増やすために、政府が中心となって農園の開発を進めました。
結果として雇用促進や貧困改善に大きく寄与し、主な輸出商品として発展しました。
参考:日本福祉大学経済論集
バイオマス燃料製造において、競合しない作物を使用(SDGs8)
非可食バイオマスを活用して、バイオエタノールの生産が行われています。
日揮グループでは、食糧と競合しない温室効果ガス削減効果の高い非可食資源を活用したバイオエタノール製造方法を確立しました。
原料は、農産・工場廃棄物(サトウキビ、廃菌床、コーヒー粕、パームトランク、古紙など)や木質系原料(木材、パルプなど)です。
新しい技術を確立し、燃料の生産が進めば、世界各国のエネルギー供給を大きく変えます。
発展途上国でも活用できるため、インフラの整備や持続的な発展にも寄与します。
バイオマス燃料とクリーンな生産消費(SDGs12)
「燃えるゴミ」や「燃やすゴミ」の埋め立て処理では、メタンガスが発生します。
このメタンガスは、発電のエネルギー源にもなります。しかも下水汚泥や汚物などの廃棄物でもバイオガスの精製は可能です。
廃棄物が発生しても有効的に使う方法や、廃棄物から発生するガスなどの有効活用がSDGs目標12番の達成に貢献します。
バイオマス燃料と気候変動対策(SDGs13)
バイオマス燃料の活用が、地球温暖化や気候変動問題への有効な対策になります。バイオマス燃料の活用が増えれば、化石燃料の使用量が減り、温室効果ガスの削減が可能になるからです。
たとえば日本航空株式会社では、SAF(持続可能な代替航空燃料)の実用化に向け、大量生産体制を整えるべく投資を行っています。
またできる限り温室効果ガスを減らすために、国内でSAFを生産し供給できるように各社と協力して2026年頃の実用化を目指しています。
他にも熊谷組は、森林伐採後に発生するバーク材(木の皮)などを活用して、木質バイオマス燃料を開発しました。
今後は行政との協力で国内の生産体制を強化すると共に、海外に拠点を作り、より多くの燃料生産を目指す予定です。
参考:Edu Town SDGs、熊谷組
なお、弊社は熊谷組の取り組みに炭化装置の提供という形で寄与しています。
バイオマス燃料の生成に興味のある方は弊社にお問い合わせください。
また、炭化装置については下記の記事で詳しく解説しているので気になる方は参考にしてみてください。
炭化炉と焼却炉はどちらを導入するべきか!メリットデメリットを比較
バイオマス燃料を活用することでSDGsに貢献しよう
今回は、バイオマス燃料がどのようにSDGsに影響を与えるのかを解説しました。
今後バイオマス燃料の生産はさらに拡大し、化石燃料の代替燃料として活用の場が広がっていくと予想されます。
生産量が増えれば、2050年のカーボンニュートラルの目標達成や化石燃料依存からの脱却が可能です。
弊社金沢機工もバイオマス燃料の開発に取り組んでおり、特に廃棄物リサイクルを強みとしています。
バイオマス燃料の利用を検討されている方は、ぜひ金沢機工にご相談ください。