予知保全とは、先進技術を活用し、事故やトラブル、不具合や故障を未然に防ぐことを可能とする保全方法です。
最近では様々な現場や設備に導入されており、炭化装置においても例外ではありません。
今回は、炭化装置に予知保全を導入するメリット・デメリットを詳しく解説します。
実際の導入事例もいくつか紹介しますので、導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
予知保全とは
予知保全とは、機械や設備に故障が起きる兆候を先進技術により事前に検知し、保全業務を行う方法です。
決まったタイミングで定期的に保全業務を行う従来の予防保全とは異なり、最適のタイミングでメンテナンスが実施できるため、ダウンタイムを最小化する以外に、部品の寿命を伸ばす効果なども期待できます。
導入コストはかかりますが、人件費や部品交換の費用を削減する効果も期待され、予防保全に代わり近年主流になりつつある保全方法と言えるでしょう。
予知保全については下記の記事で詳しく解説しているので気になる方は確認してください。
炭化装置に予知保全を導入するメリット
ここでは、炭化装置に予知保全を導入するメリットを解説します。
炭化装置は故障した際のリスクが高いため、重大な事故につながらないよう適切に運用・管理することが重要です。
以下で紹介する予知保全システムには様々なメリットがあり、事故のリスクを最小限に抑えるとともに、コストの削減にも効果が期待できます。
なお、炭化装置については下記の記事で詳しく解説しております。
炭化炉と焼却炉はどちらを導入するべきか!メリットデメリットを比較
安定した運用が可能になる
トラブルにより炭化装置が停止する事態を防ぐことができ、安定した運用が可能となる点も、予知保全を導入するメリットの一つです。
炭化装置を複数台導入していない場合、設備が故障してしまうと廃棄物の処理が困難となります。原因や状態によっては再稼働まで時間がかかるケースもあり、長引くほど廃棄物がたまってしまいます。
生産効率にも影響する重要な要因であるため、予知保全による安定した運用の実現は大きなメリットと言えるでしょう。
事故の防止が可能になる
炭化装置は一酸化炭素などを含む有害な乾留ガスを排出します。
万が一装置にトラブルが生じた際には、重大な事故に発展する可能性も否定できません。
これらのリスクを抑えるためには、予知保全の導入が効果的です。
IoTを用いた先進技術を活用することで故障の予兆を事前に検知し、安全な保全業務を可能とします。
保全にかかる人材コストを削減できる
予知保全を導入することで、人材コストを削減できる点もメリットの一つです。
従来の予防保全の方法では、保全業務を行う時期や内容があらかじめ決められており、一定の人員を割く必要がありました。
一方、予知保全の方法ならモニタリングに最低限の人員を配置し、あとは異常を検知した際に必要な人員で対応すれば事足りるため、人材コストの削減に効果が期待できます。
また、事故やトラブルが発生する前に対応できるため、従業員の心理的負担の軽減にも寄与するでしょう。生産効率の向上にも効果が期待できるため、導入の意義は大きいと言えます。
装置の長寿命が見込める
予知保全を導入することで、装置や設備の寿命を高める効果が期待できます。
予知保全のシステムでは、センサーから得たデータを利用してメンテナンス時期を割り出すことが可能です。
これにより、再稼働が不可能となるほどの重大な故障を未然に防ぐことができ、装置の寿命を伸ばす結果につながります。
修繕費用の削減が期待できる
修繕費用の削減に大きな効果が期待できる点も、予知保全を導入するメリットの一つです。
事故やトラブルが発生した場合、その内容が深刻であればあるほど、復旧にかかる時間や修繕費用は膨大となります。
先進技術を駆使した予知保全を導入すれば、事故の予兆を事前に検知し、重大な事故を未然に防ぐことが可能です。その結果、修繕費用の削減にも効果が期待できます。
部品の在庫管理が容易になる
予知保全を導入することで、部品の在庫管理が容易になる点も大きなメリットと言えるでしょう。
予知保全では先進技術を用いて事前に異常がある箇所を把握できるため、修繕に必要となる部品を事前に発注することも可能です。
不測の異常やトラブルにより修繕に必要な部品が不足し、あるいは部品を取り寄せるのに時間がかかるといった状況も防止でき、効率的かつ効果的な在庫管理が可能となります。
炭化装置に予知保全を導入するデメリット
ここでは、炭化装置に予知保全を導入するデメリットを見ていきましょう。
予知保全システムには様々なメリットがありますが、コスト面や実稼働までにタイムラグが発生するデメリットも存在します。
これらのデメリットを考慮したうえで、長期的にコストパフォーマンスを分析し、導入を検討することが重要なポイントです。
導入に費用がかかる
炭化装置に予知保全を導入するデメリットとして、高額な初期費用が発生する点が挙げられます。
予知保全のシステムは先進技術を用いた保全方法です。そのため、導入に必要となる設備やソフトウェアなどは高額となる傾向があります。
後悔しないためにも自社のシステムに合った予知保全システムを導入することが重要です。課題に対して適切なアプローチをしなければ、費用対効果は低くなってしまうでしょう。
予知保全のシステムの中には、一定期間お試しで運用できるものも存在します。これらを積極的に活用し、費用対効果の高い予知保全システムを導入しましょう。
データ取集に時間がかかる
データ取集に時間がかかる点も、予知保全システムを導入する際のデメリットと言えます。
予知保全システムを導入したからといって、すぐに運用が開始できるわけではありません。
必要なデータが少ない場合、十分なデータを取得するのに時間がかかってしまい、実際に稼働するまでにタイムラグが発生するケースも存在します。
自社の炭化装置に予知保全システムを導入した場合、どのくらいの期間で稼働できるのか、導入前にしっかり確認しておきましょう。
炭化装置に予知保全ソフトを導入した事例
金沢機工が提供する炭化装置においても、データ分析による安全機能は必要不可欠です。
ここでは、予知保全システムの導入により、炭化装置の効率的かつ安定した運用が可能となった事例を紹介します。
一般的な安全装置は閾値を設けて判断することが多いですが、予知保全を用いた分析手法を用いれば、センサー値からその先の現象を予測することが可能です。
実際に、炭化装置に予知保全ソフトを導入した事例を詳しく見ていきましょう。
安定した燃焼炉運用に活用した事例
予知保全システムは燃焼炉の運用にも活用されています。
燃焼炉は炭化プロセスの核心部分であり、不適切な燃焼は装置の効率や製品の品質に影響を与えてしまう可能性も否定できません。
予知保全システムを導入し、温度センサーや燃焼ガス分析器を使って燃焼状態をモニタリングすることで、異常を早期に検知することが可能となりました。
不適切な燃焼を抑え、品質の向上へとつながっています。
燃焼状態の監視と省エネに活用した事例
予知保全を燃焼状態の監視と省エネに活用した事例も存在します。
高温で運用されるため、温度上昇の管理が重要なテーマです。
炭化装置は最初に燃料を入れて燃焼させ、それ以降は自燃させる仕組みですが、モニタリングした結果を分析することで、適切な燃料の量が把握でき、より効率的な燃焼が実現されました。
また、モニタリングしたデータをもとに故障の前兆を早期に検知することで、適切なタイミングでメンテナンスを行うことも可能となっています。
炭化装置の導入を検討しているなら予知保全も検討しよう
今回は、炭化装置に予知保全を導入するメリット・デメリットを解説し、実際の導入事例も紹介しました。
環境問題の改善に注目が集まる昨今、炭化装置の導入を検討する現場も増えてきています。一方で、導入やランニングコストを考えると、効果的な保全業務を行うことは必要不可欠と言えるでしょう。
炭化装置の導入を検討する際には、併せて予知保全の導入も検討することをおすすめします。本記事で紹介したメリット・デメリットを参考に、長期的なコストパフォーマンスを見据えて予知保全の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
金沢機工の「機工報」ではお試しの運用も可能となっているため、検討する際はぜひご相談ください。