先進技術を用いて故障やトラブルの予兆を検知する「予知保全」は、従来の予防保全に代わり、昨今主流となってきている保全方法です。
予知保全は様々な現場で導入されており、食品業界においても導入のメリットは大きいと言えるでしょう。
そこで今回は、食品業界で予知保全を導入するメリット・デメリットや実際の導入事例を紹介します。
予知保全システムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
予知保全とは
予知保全とは、過去のデータの蓄積から異常が起きる予兆を検知してメンテナンスを行う新しい保全方法です。
これまで主流だった「予防保全」では、決められた時期に決められた内容の保全業務を行います。
そのため、最適な時期にメンテナンスを行うのが難しく、まだ寿命が残っている部品を交換しなければならないなどのデメリットが存在しました。
しかし、予知保全を導入すれば、IoTを活用した先進技術を用いて、最適なタイミングで保全業務を行うことが可能です。
これにより人件費の削減や部品寿命の延伸、ダウンタイムの予防などの効果が期待できます。
予知保全については下記の記事で詳しく解説しているので気になる方は確認してください。
食品業界で予知保全を導入するメリット
ここでは、食品業界で予知保全を導入する際のメリットを紹介します。
ダウンタイムの防止ができる
予知保全システムを導入することで、ダウンタイムの発生を防止できる点も、予知保全を導入するメリットと言えるでしょう。
食品業界において予知保全システムは、生産効率に影響を与える製造ラインなどに活用できます。
設備の故障を事前に検知することで、停止による「ダウンタイム」を防ぐことが可能です。
ダウンタイムを予防することで、生産効率の向上や損失を抑制する役割が期待できます。
食品業界においても、予知保全を導入する意義は大きいと言えるでしょう。
食品の廃棄を減らせる
食品の廃棄を減らせることも、予知保全を導入するメリットの一つです。
冷蔵設備の故障や停止は、食品の廃棄に直結します。
原因の究明や修理・防止策の実施にかかる時間が長いほど、その損失は大きくなるでしょう
予知保全を導入することで、冷蔵設備の故障を未然に防止することが可能です。
これにより食品の廃棄を減らす効果が期待でき、損失を抑える効果が期待できます。
保全にかかる人材コストを削減できる
予知保全を導入することで、保全業務にかかる人材コストを削減することが可能です。
IoTを活用した予知保全では、従来の保全方法と比較すると少ない人数でメンテナンスを行うことができます。
また、事故やトラブルによる設備の停止を事前に予防することで、事後の保全に必要な人員を削減することも可能です。
それが効率的な人員配置につながり、人件費の削減にも大きな効果が期待できるでしょう。
設備の長寿命化が実現できる
予知保全の導入は、設備の長寿命化につながります。
予知保全では、センサーから得たデータを利用して設備のメンテナンス時期を算出することで、大きな故障が起こる前に適切なメンテナンスを行うことが可能です。
ひとたび大きな故障に発展してしまうと、そのまま再稼働が難しくなるケースも存在します。そのため、深刻な故障を避けることが可能な予知保全を導入するメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
修繕費用が削減できる
修繕費用が削減できる点も、予知保全を導入するメリットの一つです。
予知保全を導入することで、最適なタイミングでのメンテナンスが可能となります。
これにより設備の大きな故障を予防し、修繕費用の削減に効果が期待できるでしょう。
故障の内容が深刻であるほど修繕費用は大きくなる傾向があります。
そのため、予知保全の導入によって修繕費を抑制することは非常に重要です。
安定した品質の食品を供給できる
予知保全を導入することで、安定した品質の食品供給につながります。
食品業界における製造現場では、オーブンなどの調理温度が変わってしまうと食品の風味などが変化してしまうといったリスクが存在します。
予知保全のシステムを活用することで、オーブンの調理温度を一定に保つことが可能です。
食品の品質の安定へとつながり、企業イメージを向上させる効果が期待できるでしょう。
食品業界で予知保全を導入するデメリット
ここでは、食品業界で予知保全を導入するデメリットを解説します。
導入コストがかかる
予知保全システムを導入する際は、高額なコストが必要となります。
予知保全のシステムはIoTを活用した先進技術を使用するため、対応できる設備やソフトウェアの整備が必要となり、発生する費用は決して安くはありません。
一方で、これまで解説したメリットからも、長期的に考えれば削減できるコストや回避可能なリスクは非常に大きく、導入の意義は大きいと言えるでしょう。
コストパフォーマンスを高めるためには、自社の課題に合った適切な予知保全システムを導入することが重要です。
データを蓄積するまでに時間がかかる
データを蓄積するまでにある程度の時間がかかる点も、予知保全を導入するデメリットと言えます。
予知保全のシステムは、導入してすぐに利用できるわけではありません。
過去のデータを活用してトラブルの予兆を検知するため、前提となるデータを収集する時間が必要です。
データが少ない場合は、収集に時間を要し、運用が軌道に乗るまでタイムラグが発生するケースも考えられます。
導入にかかるコストも決して安くはないため、運用開始時期も踏まえて慎重に検討しましょう。
食品業界で予知保全を導入した事例
食品業界でも予知保全のシステムを活用することで、製造工程における安全性の確保、品質保持、効率化などに大きな効果が期待できます。
以下では実際の導入事例を見ていきましょう。
冷凍・冷蔵設備に予知保全を導入した事例
冷凍・冷蔵設備のモニタリングにも予知保全のシステムが導入され、高い効果を発揮しています。
食品業界において冷凍・冷蔵設備は欠かせません。こ
うした設備が故障すると、食品の品質低下や廃棄という大きな損失につながる可能性があります。
そこで、冷凍・冷蔵設備に予知保全システムを導入することで、温度センサーや圧力センサーなどを利用して稼働状況を監視できるようになりました。
異常を早期に検知して対策を立てることで、生産効率の向上が実現しています。
製造ラインの予知保全を導入した事例
続いて、予知保全システムを製造ラインに導入した事例を見ていきましょう。
食品製造の工程では、包装機、充填機、焙煎機、調理機器など多種多様な機械が連携して稼働しており、これらの機械の一部が故障すると、全体の生産ラインが停止してしまいます。
製造ラインの故障内容が深刻であるほど、再稼働までに要する時間が長くなってしまい、大きな損失を招きかねません。
予知保全を導入することで、振動センサーや音響センサーを利用して機械の状態を監視し、異常パターンを早期に検知するなど、故障を事前に防ぐことが可能となりました。
これにより、大規模なダウンタイムを予防する役割を果たしています。
ベーカリー(パン製造)におけるオーブンの予知保全を導入した事例
次に、ベーカリーにおけるオーブンの温度管理に予知保全を導入した事例を見ていきましょう。
オーブンの性能は、最終的な品質に大きく影響します。オーブンの温度が適切でなければ、パンの焼き加減や風味が損なわれ、品質が保証できなくなってしまうからです。
予知保全システムの導入により、オーブンの性能の低下や故障があっても早期に異常を検知することが可能で、適切なタイミングで修理やメンテナンスを行うことができます。
品質の向上は企業ブランドの信頼性の確保にもつながるため、予知保全システムの導入が成功した事例と言えるでしょう。
予知保全ソフトで売り上げを予測しつつ、製造を調整して食品ロスを減らした事例
予知保全のシステムをうまく活用し、食品ロスを減らした事例も存在します。
予知保全を活用すれば、在庫管理の最適化も可能です。販売予測AIの予測結果をもとに、需要が高まる商品や季節商品の在庫を増やす一方で、需要予測が低い商品の在庫を抑え、在庫ロスを最小限にして販売機会を最大化することに成功しました。
上記の事例のように、設備や機械のトラブルを未然に防ぐ以外にも、予知保全は使い方により様々なメリットが生じる可能性があります。
予知保全を検討しているなら金沢機工にご相談を
今回は、予知保全を食品業界に導入するメリット・デメリットや、実際の導入事例を紹介しました。
食品業界において、予知保全システムの導入は食品の品質保証や廃棄の削減効果が期待でき、導入するメリットは非常に大きいと言えます。
こうしたメリットを最大化させるためには、自社システムに合った予知保全を導入することが重要です。
金沢機工の「機工報」ではお試しの運用も可能となっているため、検討する際はぜひご相談ください。